2018 Fiscal Year Research-status Report
The effect of corporate governance on R&D projects and innovation
Project/Area Number |
17K03964
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
西 剛広 明治大学, 商学部, 専任准教授 (10409427)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | コーポレート・ガバナンス / 取締役会の多様性 / 所有権構造 / リスク / 組織文化 / インド / エージェンシー理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は所有権構造ならびに、取締役会構成の多様性がイノベーションに与える影響を組織文化と企業の直面するリスクの観点から分析した。さらに、研究の対象を日本企業から成長市場であるインドの企業へと広げた。 まず、組織文化がコーポレート・ガバナンスとイノベーションとの関係に与える影響を分析した。株式リターンのボラティリティと従業員の平均年齢から企業の文化の保守性を推定し、保守性の高い文化において、イノベーション活動に影響を与える要因は取締役会構成の職務多様性であることが明らかになった。それに対して、柔軟性の高い組織では、取締役構成のデモグラフィック多様性と機関投資家による株式所有がイノベーションに正の影響を及ぼしていることが示された。 次に、ファーマ・フレンチの3ファクターモデルを用いて、企業の固有リスクを抽出し、固有リスクの程度に応じたコーレポート・ガバナンスのイノベーションに対しる効果を分析した。その結果、安定的な環境においては取締役会構成の多様性や機関投資家のイノベーションへの効果が確認できる一方、高リスクにおいては取締役会のデモグラフィック多様性とイノベーションとの間に因果関係があることを把握することができた。 インドのコーレポート・ガバナンスに関して、インド企業の支配株主として捉えられるファミリー【ヒンズー結合ファミリー(HUF:Hindu Undivided Family)やプロモーター】所有がR&D投資に与える影響を分析した。インドのガバナンスにおいて安定的な環境ではファミリー所有が企業のイノベーション活動に有効であることを示すことができた。このように2018年度の研究では、日本企業においては組織文化と企業の直面するリスク、インド企業においては企業の直面するリスクのような要因がコーポレート・ガバナンスのイノベーションへの影響度合いを変化させることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、企業の直面するリスクをファーマ=フレンチの3ファクターモデルのような説明力の高いモデルから抽出し、取締役会構成の多様性の程度もジェンダーだけではなく、従業員の経験や年齢などの他の要因を考慮した推定を行った。この結果、環境・組織要因を考慮しながら、コーポレート・ガバナンスのイノベーションに対する影響に関して、より精緻な分析が可能となり、示唆に富む結果を得ることができた。 また、懸案のインドのコーレポート・ガバナンスの研究に関して、2018年度、インド経営大学院バンガロール校にて在外研究を行ったため、この研究が進展することになった。インド企業の所有権構造を中心としたコーポレート・ガバナンスの研究開発への影響を明らかにするなど一定の成果が得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
成熟市場としての日本ならびに、成長市場としてインドのそれぞれのコーポレート・ガバナンス構造がイノベーションに与える効果に関してさらなる研究行っていく予定である。とりわけ、ガバナンスを取り巻くコンテクスト要因を考慮しながら、仮説やデータを整理することにより、日本・インドのガバナンス構造とその戦略的意義の解明を目指した国際比較研究に取り組んでいく。国際比較研究により、両ガバナンスがどのようにイノベーションに対して効果があるのか、共通点・相違点を整理したうえで、その特徴を明らかにすることが目標である。また、2018年度、文献研究のみに終始した日本・インドの合弁企業のコーポレート・ガバナンスが戦略に与える影響についても、実証研究を進めていきたいと考えている。 インドのガバナンスに関する研究方法に関して、インド経済やビジネスに関するProwessデータベースからデータを収集するのと同時に、バンガロールを中心とした地域で日印合弁企業に対するサーベイやインタビューのようなフィールドワークを行うことを考えている。定性・定量の両アプローチによる分析からインドのコーポレート・ガバナンスの戦略的意義を明らかにしていきたい。
|
Causes of Carryover |
2018年度に計上した旅費や物品費(とりわけデータベース代)を若干低く抑えることができたため、626円の次年度使用額が生じた。少額のため、研究に必要な消耗品購入にあてたいと考えている。
|
Remarks |
インド経営大学院バンガロール校(Indian Institute of Management, Bangalore)での研究セミナーにて報告(2019年2月18日実施) Takahiro NISHI "Ownership and Board Diversity, Innovation: Evidence from Japan"
|
Research Products
(4 results)