2020 Fiscal Year Research-status Report
消費者行動理論を考慮した消費者の動的選択行動に関する研究
Project/Area Number |
17K03999
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
里村 卓也 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (40324743)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 購買意思決定 / 消費者選択モデル / 学習モデル / 先見的消費者行動 / ヒューリスティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、消費者による学習と先見的行動が選択行動に与える影響を明らかにするために、消費者行動理論を考慮した動的選択行動モデルを構築し、さらにこのモデルを用いて実証分析を行うものである。本研究では評価時点でのヒューリスティクスを考慮した先見的消費者行動モデルの構築、学習による評価ウエイト自体の変化を考慮した動的選択モデルの構築、動的選択行動モデルを用いたマーケティング戦略評価方法の開発、の3点を行う。 令和2年度は、前年度から継続している動的な消費者行動モデルの構築と実証分析を進めた。この研究では、複数サービスを異なる間隔で繰り返し利用する消費者の選択行動について、消費者行動理論をもとにした動的選択モデルを構築し、推定方法の提案と実証分析を行うものである。研究では、これまでのモデル化で考慮されていなかったマーケティング変数のダイナミックな効果を表現する方法について開発を行った。さらに、モデルの解析的な分析を進め、データからモデル推定を行うための計算方法についての開発を進めた。 次に、前年度に続き評価時点でのヒューリスティクスを考慮した先見的消費者行動に関するモデル化に取り組んだ。まずは、複数の選択肢がある対象から複数選択を行う行動について、近似的な計算方法を利用することで計算負荷を下げながら理論にもとづいたモデルの推定を行う方法について開発を行った。その際にミクロ経済学の知見もとりこんだモデル化を行い、さらに消費者の行動データを用いた実証分析を行った。また、この結果を利用してマーケティング戦略の評価を行った。さらに、開発した計算方法を利用して消費者のヒューリスティクスを考慮した先見的消費者行動のモデル化を行うことを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、学習による評価ウエイト自体の変化を考慮した動的選択モデルの開発と実証分析を行う予定であった。しかしながら、研究を進めていた動的な消費者行動モデルの構築において、マーケティング変数のダイナミックな効果の表現、及び、時間に関する変数が統計モデルとして十分に表現できておらず、モデルとして改良することが必要となった。そのために、この問題を統一的に解決する汎用的な方法を考案し、モデルの推定に組み込むことで、理論と整合した統計モデルを開発することができた。次に推定において、計算を近似した部分について、より計算負荷が少ない方法についての検討を行った。このように、研究を進めていく上での問題解決方法を考案することが必要であった。 次に、評価時点でのヒューリスティクスを考慮した先見的消費者行動に関するモデル化に取り組んだ。まずは、複数の選択肢がある対象から複数選択を行う行動について、近似的な計算方法を利用することで計算負荷を下げながら理論にもとづいたモデルを推定できる方法について開発を行った。その際にミクロ経済学の知見もとりこんだモデル化を行い、さらに消費者の行動データを用いた実証分析を行った。また、この結果を利用してマーケティング戦略の評価を行った。さらに、開発した計算方法を利用して消費者のヒューリスティクスを考慮した先見的消費者行動のモデル化を行うことを検討した。 また、学習によるウエイト自体の変化を考慮した動的選択モデルについても、研究のレビューを行い、モデル化の方法について検討を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は先見的消費者行動モデルを完成させ、データによる実証分析を行う。そのために、評価時点でのヒューリスティクスを考慮した先見的消費者行動モデルを統計的に推定するプログラムを開発し、実証データによる分析を行う。評価時点でのヒューリスティクスについては、昨年度に開発した心理学と経済学の考え方を取り込んだモデルを、動学的選択行動に適用できるように拡張を行う。さらに、これに学習によるウエイト自体の変化を考慮した動的選択モデルを構築する。モデル化に際しては、学習による現在までの行動に加えて、将来における選好構造の変化を表現することで、学習と不確実性のもとでの最適化という消費者の意思決定を表現するものとなる。長期的に消費者の選択行動を記録したパネルデータを入手して、モデルの推定を行う。この成果をもとに英文論文の作成と国際学会誌への投稿を行う。 続いて動的選択行動モデルを用いたマーケティング戦略の評価方法の開発を行う。動的選択行動モデルを用いてマーケティング戦略の変更により将来の消費者行動がどのように変化するのかをシミュレーションから確認し、これをもとにマーケティング戦略を評価する方法を構築する。また、マーケティング戦略の最適化についても検討を行う。これらから消費者行動理論にもとづく消費者の動的選択行動を考慮した企業の意思決定の方法についての構築と実務への示唆を得る。これらの成果を国際学会で報告し、英語論文の作成と国際学術誌への投稿を行う。 また、令和2年度に開発した動的な消費者行動モデルの論文についても英文論文を完成させ、国際学会誌への投稿を行う。 最後に研究期間の成果をとりまとめ、成果報告書を作成する。
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Causes of Carryover |
令和2年度は海外で開催される国際研究大会への参加および海外共同研究者と研究の打ち合わせを行う予定であったが、新型コロナウィルスの世界的感染拡大により出張を行うことが不可能となり、次年度使用金が生じた。さらに、大学において新型コロナウィルス対応のために膨大な時間をとられた。このように全く予期せぬ事態により研究を計画通りに進めることが出来なかった。 本年度は、これまで進めてきた研究を完成させ、オンラインでの国際学会への参加を含めた研究発表を行い、論文を完成させる。
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