2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K04068
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
村上 裕太郎 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 准教授 (30434591)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 租税回避 / ディスクロージャー / キャリア・コンサーン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、多国籍企業の租税回避と所在地別セグメント情報の開示について、理論的・実証的に分析することを目的としている。平成29年度は、セグメント情報開示および租税回避の理論および実証文献を調査し、それらの文献の論点を整理した。具体的に、情報開示の理論研究については、Murakami and Shiiba (2016)をはじめ、集約・非集約情報の開示問題を扱ったArya and Mittendorf (2011)を中心にレビューした。実証文献については、租税回避および情報開示を分析した論文(Hope et al., 2013など)を精査した。 その後、先行研究を参考に理論モデルの構築を行なった。モデルの具体的な拡張方法として、税率の異なる2国に事業を展開する多国籍企業を想定し、新たに2国間での利益移転(租税回避)を導入した。税引後利益と株価から効用を得る経営者は、利益を最大化するために、なるべく税率の低い国に租税回避をするインセンティブをもつが、それと同時に、資本市場における株価最大化も目的としている。このような設定のもと、低税率国の利益精度が低い(ボラティリティが高い)場合、利益最大化と株価最大化の間にトレードオフが存在することがわかった。すなわち、利益最大化のためにはなるべく低税率国に利益を移転させたいが、そうすると低税率国の利益精度が低いため、株価が低くなってしまうのである。 上記の分析を進めることによって得られた研究成果を、セミナー(分析的会計研究会)、国内学会(ディスクロージャー研究学会・日本会計研究学会)、および国際学会(ヨーロッパ会計学会・アメリカ会計学会)にて報告し、参加者から貴重なコメントをいただいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定は、初年度に先行研究のサーベイおよび理論モデルの拡張を行ない、それを国内外のセミナー・学会にて報告することであった。それらの予定はおおむね順調に達成することができた。現在は、学会にて参加者からもらったコメントを反映し、学術誌投稿に向けて論文の改訂作業を行なっているところである。この論文改訂作業は、半年ほどかかることが予想される。論文投稿先としては、海外の学術誌を考えているため、投稿後掲載まで時間がかかることが予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
先述したように、現在は、学会にて参加者からもらったコメントを反映し、学術誌投稿に向けて論文の改訂作業を行なっているところである。この論文改訂作業は、半年ほどかかることが予想されるため、平成30年度中盤に論文を投稿する予定である。論文投稿後、結果がわかるまで3か月ほど、その後レフリー・コメントに対処するのに3か月から半年ほどかかると考えている。
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Causes of Carryover |
使用計画の内訳として、海外出張費が多くの割合を占めるが、航空券代は時期や場所によって変動が大きく、若干の余裕をもって予算を組んだため、差額が生じた。次年度使用額は請求額の1割未満であるため、国内出張費等に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)