2017 Fiscal Year Research-status Report
裁量的会計発生高と企業による実物投資の関係に関する総合的研究
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17K04089
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Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
中條 良美 阪南大学, 経営情報学部, 教授 (00387383)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 会計不正 / 実物投資 / 生産性 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究では、会計不正が企業の実態的行動にいかなる影響をおよぼすかに関する理論モデルを構築した。そこではまず、コブ・ダグラス型の生産関数に直面する企業を前提としたとき、その利潤を最大化するための投資水準が、生産性と限界費用という2つのパラメータを主要な要素とする関数のかたちであらわされることが示された。もとより、企業による実物投資の大きさと限界費用は、財務諸表から読み取られるが、当該投資の事実上の生産性は公開されたデータから推測することができない。このとき、均衡を導くための一階条件から、観察可能なパラメータである限界費用と観察不可能なパラメータである生産性との間に、負のトレードオフが導かれた。すなわち、利益マネジメントなどの手段を講じて限界費用を小さく表示すれば、企業が手掛ける投資の生産性が高く評価されるわけである。 この単純な命題から導かれる仮説は、つぎの3点に集約される。①実物投資の生産性が低い企業がそれを実際以上に高くみせたい場合に、限界費用を小さく表示するインセンティブが高まる。②財務諸表上で操作された限界費用を現実の生産性と整合させるために、会計不正に従事する企業は、実物投資の過剰に陥る可能性がある。さらに、③会計不正が実施された期間とその後とでは、投資決定のあり方が変化すると考えられる。なぜなら、表示上圧縮された限界費用は翌期に反転するので、実際の生産性が向上しないかぎり、従前の過大な投資水準を維持することはできないからである。次年度の研究では、理論モデルから導かれた作業仮説を、実際の財務データによって跡付けることを目標とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論モデルを構築する際には、何よりも適切な前提とパラメータを設定することが求められる。その作業が難航すると、均衡で導かれるパラメータが、現実的な解釈に堪え得ないような値をとることになる。そうした試行錯誤を繰り返した結果、今年度は検証可能な仮説を設定するまで研究を進捗させることができたので、上記の判断を下した。
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Strategy for Future Research Activity |
理論モデルから導かれた3つの仮説が、現実の企業行動と整合しているかどうかを確認するため、財務データをもちいた実証分析を実施する。同時に、会計不正の程度を利益訂正の大きさによって測定する予定であるため、利益訂正報告書のデータを手作業で収集することを計画している。
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Causes of Carryover |
すでに購入した書籍の内容に、購入を予定していた書籍の内容が含まれていたため、一部書籍の購入を取りやめた。当該残額は、次年度データベースを追加して購入する際の原資の一部に充当する予定である。
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