2017 Fiscal Year Research-status Report
日本の市民セクターにおけるビジネスライク化の実態とメカニズムに関する研究
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17K04093
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
仁平 典宏 東京大学, 教育学研究科, 准教授 (40422357)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 市民社会組織 / NPO / 社会運動 / サードセクター |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の目的は、日本の市民社会組織の「ビジネスライク化」と呼ばれる変化に焦点を当てて、そのメカニズムや諸帰結を明らかにすることである。 本年度の成果は主に次の二つである。 第一に、「日本におけるサードセクターの経営実態に関する調査」(2014年、RIETI)を用いて、市民社会組織のビジネスライク化(商業化や専門化など)が、職員の雇用にどのような影響を与えているのか計量的に分析した。ここで、「商業化」とは、非営利組織が物やサービスの販売などの事業収入に依存するようになることを指し、「専門化」とは、エキスパートが役割を担うようになることを指す。その結果、「商業化」に関しては、行政サービスの準市場化に雇用促進の効果があることが確認されたが、職員間の年収格差を広げたり不安定な雇用を作り出している可能性などの効果の存在も指摘した。「専門化」についても、研修という手法が雇用の安定に必ずしも結びついていないことを明らかにした。 第二に、次年度実施する市民社会組織調査の準備を行った。具体的には、2006年末に実施された「首都圏市民活動団体調査」(代表者:町村敬志)の結果と比較するため、同調査と同一のサンプルの確定作業を行った。これらのある部分は既に消滅しているなど、調査不能な状態にあることがわかった。具体的には、前回調査対象の3584団体のうち、2509団体について存続が確認され、住所などの連絡先を特定することができた。これが次年度の質問紙調査のターゲットとなる。 第三に、「東日本大震災市民活動調査」(2016年)のデータを用いて、収入源のビジネスライク化がアドボカシー等の政治的行動にいかなる効果を有しているか分析し、その結果をパリで開催されたThe 6th French Network for Asian Studies International Conferenceにて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・2018年度に実施予定の首都圏市民活動団体調査については、対象サンプルの確定作業が重要であったが、当該年度中に完了することができた。12年経過して消滅した団体も多かったが、一応調査可能なサンプル数が確保できたと考えられる。さらに、次年度の質問紙調査のために、当時の研究グループと連絡を取り、仮説や質問項目の精査を目的とした研究会を実施した。 ・「日本におけるサードセクターの経営実態に関する調査」や「東日本大震災市民活動調査」のデータの二次分析という形で、組織の収入や組織構造のビジネスライク化が、組織の雇用やアドボカシーに対して与えた効果を分析し、その成果を論文や学会報告の形で発表した。この分析によって、ビジネスライク化のメカニズムや効果について複数の知見を得ることができたわけだが、それは、2018年実施の質問紙調査に向けた仮説や分析視角の洗練という点でも、大きな意義を持ったと考えている。 ・以上の点から、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
・2018年度の最大の課題は、「首都圏市民活動団体調査」を実施することである。そのために、当時の研究グループのメンバーも含めた研究会を実施し、市民社会組織のビジネスライク化の諸相について余すことなく捉えられる質問紙を作成し円滑に調査を行う。。 ・2017年度は計量的な分析について計画以上の成果を出すことができた反面、市民社会をめぐる言説の分析が遅れがちになっているため、上記の調査と並行して効果的に言説資料の収集・分析も行っていく。
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Research Products
(3 results)