2018 Fiscal Year Research-status Report
日本の市民セクターにおけるビジネスライク化の実態とメカニズムに関する研究
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17K04093
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
仁平 典宏 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 准教授 (40422357)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 市民社会 / NPO / 社会運動 / ビジネスライク化 / 新自由主義 / 質問紙調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の目的は、日本の市民社会組織の「ビジネスライク化」と呼ばれる変化に焦点を当てて、そのメカニズムや諸帰結を明らかにすることである。本年度の成果は主に次の4つである。 第一に、2006年に行われた「首都圏の市民活動団体に関する調査」の後続調査という位置づけのもと、2019年3月に2,536団体に対し郵送調査を実施した。調査票作成の上では、Maier, F.ら(2016)の理論枠組みに基づき、ビジネスライク化の要素として「商業化」「転換」「企業体化」「市場化」「起業家化」「専門化」に注目し、それらを検証可能な指標に変換して質問項目を作成した。この際、前回の調査票と同一の質問を多く設けることで、13年の間に市民社会組織においてビジネスライク化がどの程度進行しているのか検証できるデザインにした。現在、調査票の回収中である。 第二に、「日本におけるサードセクターの経営実態に関する調査」(2014年、RIETI)を用いて、法人格の転換、商業化、専門化というビジネスライク化の3つの要素が、職員数や賃金水準、雇用の安定性にいかなる影響を与えているか、それが政治にいかなる含意があるのかを分析し、日本社会学会において発表した上で、論文にまとめた。 第三に、ビジネスライク化した「市民」と、争議性の高い運動との間に、いかなる言説・意味論上の距離があるのか、またそれにもかかわらず両者に協力関係が形成されるとしたら、そのメカニズムは何かについて、フィールドワークに基づく論文を執筆した。またそれを、多文化共生の構造的条件をテーマとした書籍に編者として関わり、同論文を収録して刊行した。 第四に、2000年代に日本の市民社会組織が、新自由主義の文脈下で、いかなる変容を被ったのかについて、2006年に実施した市民社会組織を対象とした質問紙調査のデータを再分析し、国際シンポジウムで報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・当初の計画通り首都圏市民活動団体調査を実施することができた。本調査はプロジェクト全体の中心をなすものであり、これを無事に実施できたことは大きな意味がある。また調査票の作成に関して、2006年時調査の研究グループメンバーとの協議を通じて、ビジネスライク化という概念を適切に指標化し、検証可能な形で調査票に反映することができた。現在、調査票が返送されているところであり、2019年度にはまとまった形で知見を出すことができる予定である。 ・「日本におけるサードセクターの経営実態に関する調査」の二次分析を通じて、市民社会組織のビジネスライク化が、その雇用構造や政治的布置にいかなる影響を与えたかを検証した。また、ホームレス支援活動のフィールドワークに基づく調査を通じて、ビジネスライクな言説と争議的な社会運動の距離と連携可能性を検討した。この2つの研究は、それぞれ『現代日本の市民社会』(後房雄・坂本治也編、法律文化社)、『共生社会の再構築Ⅱ デモクラシーと境界線の再定位』(大賀哲・仁平典宏・山本圭編、法律文化社)という書籍に収録して世に問うことができた。特に後者は編者として刊行に尽力した。 ・以上の点から、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
・基本的な調査方針はこれまでの通りである。 ・2019年度の最大の課題は、「首都圏市民活動団体調査」の返送された調査票のデータ化と分析を行い、2006年時点と比べた市民社会組織のビジネスライク化の諸側面を明らかにすることである。分析に関しては、記述的に対象の特性を明らかにした上で、多変量解析を用いてビジネスライク化の諸側面(「商業化」「転換」「企業体化」「市場化」「起業家化」「専門化」)が、団体の活動のレパートリーや政治性にいかなる影響を与えているかを仮説に基づき検証していく。 ・上記作業と平行して、市民社会をめぐる言説のビジネスライク化に関する分析を進めるべく、言説資料の収集も効果的に行っていく。
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Research Products
(8 results)