• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2019 Fiscal Year Research-status Report

集合的記憶論とトラウマ記憶論の接合可能性の探究――記憶研究の学際的展開に向けて

Research Project

Project/Area Number 17K04144
Research InstitutionHiroshima City University

Principal Investigator

直野 章子  広島市立大学, 付置研究所, 教授 (10404013)

Project Period (FY) 2017-04-01 – 2021-03-31
Keywords記憶と歴史 / トラウマ記憶 / 集合的記憶
Outline of Annual Research Achievements

本年度は、集合的記憶およびトラウマ記憶に関する主要な先行研究のうち、2010年以降に発表された日本語と英語の論考を対象に分析した。集合的記憶論に関しては、理論、方法論的に新しい議論が展開されるというよりも、人権や歴史的正義といった政治的概念と記憶概念を接合させて論じる事例研究や、歴史認識の事例研究として記憶概念を援用する研究が多かった。トラウマ記憶論については、特に日本語の文献において、戦争による精神疾患としてトラウマ/PTSDを捉える論が増えているが、精神分析的トラウマ概念を取り入れた経験的研究は少数にとどまる。2000年代後半以降、特に2010年代に入ってからの顕著な傾向として、歴史学、社会学、政治学だけでなく、哲学、心理学や神経学も含めた学際的な記憶論のハンドブックやアンソロジーが欧米の主要出版社から多く出版され、これまでの記憶研究(特に集合的記憶という概念とその応用)について批判的に考察する論考が多数みられた。一つのアンソロジーのなかで集合的記憶論を用いた論考とトラウマ記憶論を用いた論考の両方が収録されるケースもあるものの、精神分析学的なトラウマ記憶論を集合的記憶論と接合して論じるものは、管見の限りなかった。
これまでの研究成果の発表として、2019年11月2日に広島市立大学サテライトキャンパスにおいて、公開シンポジウム「記憶の存在論と歴史の地平」を開催した。テクスト、証言、絵など、具体的な記憶の在り処を対象に、記憶が差し出してきた認識論的、存在論的な挑戦と向き合うという趣旨のもと、第1部では立木康介氏(京都大学・精神分析学)、冨山一郎氏(同志社大学・歴史学)および直野(本研究課題代表者・社会学)が報告し、第2部で討論者の柿木伸之氏(広島市立大学・哲学)のコメントと質問を受けて、松嶋健氏(広島大学・文化人類学)をモデレーターに、会場も含めてディスカッションを行った。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

分析対象とする先行研究について、集合的記憶論についてもトラウマ記憶論についても、主要なものはレビューすることができた。また、学際的なシンポジウムを開催することができた。

Strategy for Future Research Activity

来年度については、これまでにレビューしてきた集合的記憶論とトラウマ記憶論の認識論・方法論的課題について、社会学と歴史学の認識論・方法論を通して検討しながら、経験的研究において集合的記憶論とトラウマ記憶論の有機的に接合する可能性を探求する。加えて、研究成果発表やシンポジウム開催を予定しているが、すでに2020年度のMemory Studies Associationの国際会議はキャンセルが決定しており、今後の新型コロナウィルスの流行状況によっては、本研究課題による国際シンポジウム開催は困難になると思われるため、国内シンポジウムに切り替える等、代替案を検討する必要が生じる可能性もある。

Causes of Carryover

シンポジウム開催のための旅費と謝金について、近隣に在住する登壇者や学内の教員が報告者・討論者となったために、予定より少額の執行額となった。また、新型コロナウィルスの流行のため、年度末に予定していた研究会発表を取りやめることになり、旅費の執行をしなかった。

URL: 

Published: 2021-01-27  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi