2021 Fiscal Year Research-status Report
集合的記憶論とトラウマ記憶論の接合可能性の探究――記憶研究の学際的展開に向けて
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17K04144
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
直野 章子 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (10404013)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 集合的記憶 / トラウマ記憶 / 文化的記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に抽出したトラウマ記憶と集合的記憶が接合する可能性について、トラウマ記憶であっても、出来事にかかわる集合的イメージや記憶の社会的枠組みに影響を受けながら形成されているという観点から、主に英文で書かれたトラウマ記憶や文化的記憶に関わる理論的な論考をさらに精査し、具体的な事例についても分析した。また、トラウマ的な出来事に遭遇した個人の記憶は、社会的・文化的な記憶の枠組みに象られてはいるが、一方的にではないこと、そこには、空想という機制も含めて、過去をやり直そうとする主体の関与があることも確認した。 研究成果としては、原爆体験にかかわるトラウマ記憶(特に、視覚的に表現された記憶)が、いかに社会の集合的・文化的記憶の枠組みによって象られているかについて、「原爆の絵」や報道写真を分析対象として、Memory Studies Associationの第5回国際会議(2021年7月5-9日、オンライン開催)にて“Traumatic Memory as Cultural Memory: A Socio-Historical Exploration of the Construction of Memory in the Atomic Bombing Survivors”と題して7月9日に発表した。また、一昨年度と昨年度に実施した「記憶の存在論と歴史の地平」IとIIのシンポジウムでの成果を論文としてまとめた。2022年6月刊行の京都大学人文科学研究所『人文学報』の小特集として掲載予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの感染拡大により、国外の研究者を招いて行う予定であった国際シンポジウムは開催を断念せざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、国外研究者を招へいして国際シンポジウムを開催する予定である。新型コロナウィルスの感染状況によっては、オンライン開催となる可能性もあるが、対面実施を目標にしつつも、再延期はせず、本年度中に実施する予定である。
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Causes of Carryover |
ワルシャワで開催予定であったMemory Studies Associationの国際会議での発表を見込んでいたが、新型コロナウィルスの感染状況が収まらなかったために、オンラインでの実施となった。また、国外の研究者を招いて行う予定であった国際シンポジウムも開催を断念せざるを得なかった。以上の理由から、旅費を執行できなかった。
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