2017 Fiscal Year Research-status Report
基幹放送化後のコミュニティ放送 世代交代にみる理念の継承と変革の可能性
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17K04175
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
松浦 さと子 龍谷大学, 政策学部, 教授 (60319788)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北郷 裕美 大正大学, 地域創生学部, 教授 (20712623)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | コミュニティ放送 / 世代交代 / 基幹放送 / 地域の課題解決 / 市民参加 / 後継者選定 / 経年変化 / 経営課題 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は初年度であり、各メンバーの研究をもとに、研究の方向性を定めて軌道にのせるため、研究会の開催と調査枠組の試論、仮説検討に重点をおいた。 まず2016年コミュニティ放送全国調査以後に行ってきた制度創設以後の分析を継続し、各局の創設時期を以下の三分類に当てはめ、萌芽期(黎明期)1992~2001、展開期2002~2010、転換期2011~以降を検討した。そして、それぞれの時期に、情報提供⇒双方向参加型⇒議論循環・地域世論形成型というメディア・コミュニケーションの質の変化を捉え、妥当性を検討した。 また、コミュニティ放送の時間的な推移と併せた世代交代、理念継承の実態検証の必要性を再確認するとともに、初年度の研究会では実証研究に入るために研究計画自体の調査要素を凝縮する検討を行った。以下は、確認した調査項目である。(1),開局時における創設者の「理念・物語・記憶」、地域における使命や役割。(2),創設以後の代表者、スタッフ、パーソナリティらの創設当時の「理念・物語・記憶」。(3),コミュニティ資源の保全者・課題解決の共同管理者としての役割についての考え方、等である。 そこで本年は、萌芽期(黎明期)に創設された局に注目した。とくに近年相次いで開局20周年を迎えていることを鑑み、制度創設1992年当時に開局した局だけでなく、阪神淡路大震災後、各地に創設が相次いだ時期に開局した局から調査局を選んだ。そこで、地元自治体出資比率(綾部市出資61%)が高いことで注目されてきた株式会社エフエムあやべ(京都府)の第一回ヒアリングを実施した。また被災した熊本シティエフエムの担当者が来洛され講演を聴講した。 さらに、調査のまとめから近年のコミュニティ放送の仕事がソーシャルワークの要素を持つことや、コミュニティ放送世代交代の研究序説として、メンバーはそれぞれの検討内容を紀要にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数年の調査・研究の初年度ということもあり、出来るだけ事前の資料整理および仮説構築に重きを置いた。その際にはかつて研究活動を共にした「日本型コミュニティ放送の成立条件と持続可能な運営の規定要因」における研究会のメンバーの協力を得てディスカッションを2017年6月龍谷大学にて行うことができた。 調査実績に報告したように、調査すべき対象局の再検討の結果、開局20年以上となる局「エフエムあやべ(綾部市)」のヒアリングや聞き取り調査を実施している。また、北海道地域については分担者が、「三角山放送局(札幌市西区)」「ラジオニセコ(ニセコ町)」「FMじゃが(帯広市)」「FMもえる(留萌市)」「FMりべーる(旭川市)」「さっぽろ村ラジオ(札幌市東区)」「FMえどがわ(江戸川区)」「レインボータウンFM(江東区)」へのヒアリングを行った。これ以外に、北海道開発協会主催(北海道札幌市)による第13回助成研究発表会、東京都豊島区市民講座「としまコミュニティ大学」での講義およびニセコ町観光協会主催(北海道ニセコ町)のラジオニセコフォーラム2017で講演とディスカッションにパネラー参加し今回の世代交代に触れた。 代表者・分担者ともに、多くは前年度までに継続して行ってきた「全国コミュニティ放送調査2016」の再検討・再分析に依拠し、当研究調査の方向性は大正大学研究紀要(2017)、龍谷大学政策学論集(2018)にまとめ、実践と並行した研究を進捗させ、予定の調査を進めることができなかったが、それ以外の側面で研究を深めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の発展としては引き続き研究会の議論と分析を踏襲しつつも、研究計画に上げた萌芽期(黎明期)創設の局についての調査を継続する。とくに、当初予定していた調査対象局を再検討し、本年は実施を進める計画である。 メンバーの勤務校の職務が増大しており、調査数や日程に予定との齟齬が出る可能性もあるが、分担者も増員するため、合理的な計画の再構成は随時行い、可能な日程で実施したい。 世代交代はスタッフの高齢化で確実に進んでいるが、経営環境・放送環境・代表者のカリスマ等がコミュニティ放送の理念継承にどのように影響しているのかも今後検証してゆく。 また調査対象については、展開期に創設された局をどのように比較検討してゆくのか、それらの考察も行ってゆく予定である。 さらに、次年度(最終年度)に研究成果をまとめる方策や成果報告の手法についても、研究会を開催し具体的な準備を始める予定である。 なお、研究メンバーの研究遂行上、所属校における教育・行政上の学務との日程調整が困難を伴うことから、調査が単独で実施されることも予定されうる。相互に連絡を取り合い、特に萌芽期(黎明期)1992~2001に創設された局への調査を進めるべく調整したい。
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Causes of Carryover |
初年度は、研究会の実施と研究計画を練り込む検討に時間を費やし、また、学務で山野に入る分担者と面談による研究会の日程調整が困難で、電話とメールのやりとりで研究情報の交換を行うことが多く、調査対象の再検討や日程調整の結果、初年度は交通費を抑えることとなった。 また実地調査よりも過年度の調査を「分析・検討」することに力を入れたこと、他研究費での調査の経路途上に調査先があったこと、近郊都市の調査に変更したことなどで、予想外の交通費の節約になったこともあったため、次年度使用額が生じた。 特に、次(2018)年度に研究分担者を増やすことになり、十分に調査交通費を確保することも考慮した。 次年度では、分担者増で実地調査の回数や遠方の調査地を回ることもあり、交通費等活用する機会は確保できることと考える。
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Research Products
(4 results)