2020 Fiscal Year Research-status Report
基幹放送化後のコミュニティ放送 世代交代にみる理念の継承と変革の可能性
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17K04175
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
松浦 さと子 龍谷大学, 政策学部, 教授 (60319788)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北郷 裕美 大正大学, 社会共生学部, 教授 (20712623)
小川 明子 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (00351156)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コミュニティ放送 / 政治的観点 / 住民投票 / 県民投票 / 若者 / 福祉 / 意見・立場の多様性 / 閉局 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度はCovid19の感染拡大により、遠方にでかけての研究計画がまったく立たなくなり、担当講義のオンライン対応にも時間を割かれ、電話調査もままならなくなった。そのため、共同研究者(松浦、北郷、小川)により2度のオンライン研究会を実施し、2020年度をこれまでのヒアリング成果を論文執筆などにまとめることと、学会報告等の研究公開のための研究報告年間とすることとした。またネットワークを生かした調査研究データの蓄積を、NPО法人のコミュニティ放送局の運営者の勉強会に提供し、研究成果を社会に活かすための工夫を凝らした。 9月に開催された社会情報学会(SSI)学会大会(同志社大学・オンライン)では松浦が2019年に実施した名護市・石垣市の調査成果として、意見の異なる若者たちが対話のためにコミュニティ放送を利用した番組について報告した。これらの事例では、経営者やパーソナリティの世代交代が関係しており、研究費を活用できたと考える。この件については、龍谷政策学論集に「『できるだけ多くの角度から』対話する拠点としてのコミュニティ放送 沖縄県の住民投票をめぐる若者たちのラジオ番組」との表題でまとめた。 また3月に、京都コミュニティ放送で「コミュニティ放送の持続可能性を考える」研究会を松浦、北郷、小川が「担い手、リスナー、パーソナリティの世代交代から見るコミュニティFM」と題してオンラインで開催、北郷が執筆した『大正大学研究紀要』「コミュニティ放送の世代交代に関する理念の継承と変革の可能性 パーソナリティ・モード・シフトの関連から」を基に「意欲的に創設されたはずのコミュニティFMはなぜ廃局に至ったのか」との内容で、各地の閉局事例を分析し、参加者からの反応のヒアリングも行った。 それらの結果から、理念の継承と経営の持続性の両立の困難さが明らかになり、今後の重要テーマとして捉えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ感染症の拡大により、調査計画、講義計画がオンライン対応となったために、大きく予定を変更せざるを得なかった。とくに、現地調査により、コミュニティ放送局の地勢的な状況を把握することが現実的に困難となったことで、全国調査の意義が薄れていることに大きく起因する。 しかし、逆にオンラインでのヒアリングに協力くださる方もおられ、部分的なもので調査としては不十分ながら、番組休止や中止が相次ぐなどコロナ禍の状況をお聴きすることができた。また地域研究の融資や基金のサポート等、支える背景も伺うことができた。 地域経済に依存しており、経営的に非常に厳しい状況にあるものの、本研究への関心が高いので、研究会開催に関心をもっていただけ、当事者としての体験から研究に対してコメントをいただいたことは貴重であった。ただし、行動制限がかかっている間は、当事者へのインタビューに依拠する本調査は、たいへん困難であり、さらなる延長または仕切り直しの体制作りが必要となろう。
職場でもオンラインサポートに回っている同僚を目に、研究に没頭することは難しかったが、コロナ禍ゆえのデータ収集にもっと力を注ぎたい。 なお、オンライン研究会を非公開で実施するなかで、今後の研究構想や計画を練る時間を得られたことは、意義深いことであった。多忙を極めるなかで、協力くださった方々すべてにお礼を申し上げ、今後の研究へのご理解をいただきながら、継続してゆきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
当事者であるコミュニティ放送スタッフのスケジュールを最重視しながら、訪問調査は最終年で不可欠だと考えている。また、共同研究者の共通の関心が、沖縄県のコミュニティ放送に集中してきたので、感染状況を横目でにらみながらスケジュールを組んでいる。 理念の継承を経営的な継続性とどのようにリンクできるのか、また、退職した高齢経営者がロータリークラブや政治家などとの関係を強化できる等、若年層への経営移行が地域経済との連携を強める効果も見られ、若年層や子どもたちをラジオにつなぐ運営と、地域の企業経営者とのネットワーク形成が機能しているように思われる。 理念は経済活動に結びつけにく点も多いが、コロナ禍において、そうした理念を振り返る機会も多くなっている。また周年事業の際に、コミュニティ放送の原点を振り返る機会なども設けられ、コロナ禍での問題は少なくないし悲観的な側面も多いが、そこで見出された原点と若い参加者たちがシナジー効果をもたらし、放送局のみならず地域社会へも影響が拡大し、コミュニティ放送局本来の成果をあげつつある。 とくにジェンダー平等の話題が注目された2021年春、地域の女性たちの声がコミュニティ放送とまちづくりをつなぐ可能性も高い。女性経営者が後継者をどのように育成しているのか等、ジェンダー視点を盛り込みつつ、世代交代に注目した調査をまとめ、できれば今後の科研費申請のもととなるデータを最終年に収集したいと考えている。 災害時におけるコミュニティ放送の重要性は一般にも共有されるようになり、開局も相次ぐ中、まちづくりに欠かせない理念継承の側面と持続可能性の課題の議論を深め、コミュニティ放送の意義を改めて社会に定着させる研究を進めたい。
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Causes of Carryover |
最終年となるため、典型事例とみられる沖縄県の事例調査を合同で行う予定である。差額はそれぞれの共同研究者で負担しても、世代交代がコミュニティにおいて支持されているケースが複数認められたので、現地調査の実施に用いることとなるだろう。 コロナ禍で予定が立たないながらも、ワクチン接種が共同研究者に行き渡り、現地の高齢者の受け入れ状況が整うことを確認しつつ、ぜひヒアリング調査を敢行したい。 沖縄県には、高齢者が地域経済とネットワークを形成し、運営を子どもや大学生たちとつながる若者にゆだねる傾向が見られ、放送内容の充実と経営状態の充実を並行させているFMやんばるがあり、クラウドファンディングで全国からの支援を得るなど好ましい資金調達を行っていることが際立っている。また、NPO法人の認定団体の承認を目指すFMよみたんも興味深い計画をもっており、理念と経営をどのように継承するのかについて興味深いヒアリングができることが目される。ぜひ助成交付額を用いて有意義な最終年度の調査を行いたい。
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Research Products
(4 results)