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2018 Fiscal Year Research-status Report

韓国における家事・介護労働者の労働実態と組織化に関する研究

Research Project

Project/Area Number 17K04182
Research InstitutionKwansei Gakuin University

Principal Investigator

横田 伸子  関西学院大学, 社会学部, 教授 (60274148)

Project Period (FY) 2017-04-01 – 2020-03-31
Keywordsジェンダーの視点 / ケアワーカー / ケアの社会化 / 特殊雇用労働者 / 協同組合 / 労働・社会・女性政策
Outline of Annual Research Achievements

1990年代以降、グローバリゼーションが急速に進み、世界規模での激烈なメガコンペティションが展開された。グローバル企業間の競争に勝つために、労働の規制緩和政策が導入され、全世界的に非正規労働者が急激に増大した。一方、韓国ではこれと相俟って女性の労働力化や少子・高齢化が進んだ結果、これまで家庭に任されていたケアの社会化が促進され、ケアワーカーが大量に生じた。これらの圧倒的多数は、中高年・低学歴の女性非正規労働者によって占められている。本研究は、韓国のケアワーカーの中でも、家事労働者と介護・看病労働者に焦点を当て、ジェンダーの視点から労働実態や、生活実態、さらに労働者の組織化の方法を明らかにしようとするものである。
2018年度は、文献資料やケアワーカー協同組合などのインタビュー調査に拠りながら韓国のケアワーカーの労働市場分析を行い、その労働実態や雇用関係の特殊性を明らかにした。すなわち、彼女たちの多くは、雇用労働者というよりは個々の家庭や患者家族と単独にケアサービスの請負契約を結ぶ独立請負業者としての性格が強く、労働法や社会保障制度の保護から排除された「特殊雇用労働者」であることがわかった。したがって、誰が使用者であるかはっきりせず労使関係を形成することもできないため、ケアワーカーの組織化は、労働組合より協同組合という方法が有効であることが浮かび上がった。
他方、こうした非正規労働者や特殊雇用労働者の雇用・就労条件を決定づけるもっとも重要な要因の一つに政府の労働・社会政策が挙げられる。2018年度は、「労働尊重」を公約に掲げた文在寅政権の労働・社会・女性政策の分析を行い、労働市場の最周辺部に位置する女性非正規労働者の労働基本権の確立にどれだけ寄与したかを考察した。進行中の政策ではあるが、周辺部労働者の社会的包摂や格差社会の解消にそれほど効果を上げていないことが実証された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

韓国のケアワーカーに関する政府統計のraw dataや調査報告書といった文献資料を十分に渉猟し、それらを詳細に分析したこと。同時に、ケアワーカー協同組合及び非正規女性労働者を組織する女性労働組合において、それぞれ2回延べ10時間にわたって、インタビュー調査を実施したこと。これらを通して、韓国のケアワーカーの就労実態や組織化の方法を浮き彫りにすることができ、その成果を学術論文にまとめ発表した。こうして、二つの方向性を持つ当初の研究計画の一方はほぼ達成できた。
他方、もう一つの研究計画である文在寅政権の労働・社会・女性政策の考察は、現在進行中の政策であるため、そのつど、報道資料や政府報告書、統計資料の分析を行っている。また、文在寅政権の労働・社会・女性政策を立案、企画する複数のキーパーソンや、労働組合や市民運動の活動家に対するインタビュー調査の約束も取りつけ、2019年度の調査研究の段取りも整った。
さらに、2019年度には、韓国の労働改革に直接かかわっている研究者や実務家、労働組合の活動家を日本に招請し、日韓比較の視点から両国の「働き方改革」に関する国際シンポジウムを開催する予定である。2018年度から、本研究の成果を社会に還元するべく、日韓双方と緊密に連絡を取りながら、シンポジウム開催の準備を着々と進めてきた。
以上より、現在までの研究課題の進捗状況はおおむね順調に予定通り進んでいると言ってよい。

Strategy for Future Research Activity

2018年度の研究で得られた知見をもとに、2019年度の研究を鋭意推進していきたい。
まず、文在寅政権の労働・社会・女性政策の分析と考察を行う。とくに、文在寅政権の労働改革の3本の柱である、最低賃金額の引き上げ、公共部門の非正規労働者の無期契約職転換、労働時間の短縮がどのように展開されたかを緻密に追い、その実態と問題点を把握する。さらに、それらの政策が非正規女性労働者、中でもケアワーカーの労働・雇用条件にどのような影響を与えたかを文献資料の渉猟と分析、及び政策立案と実行に影響を与えた政府関係者、研究者、実務家、労働・市民運動の活動家に対するインタビューを通じて見ていきたい。
また、文在寅政権の労働改革を客観的に捉え、評価するために、韓国から政策立案に影響を与えた研究者や実務家、活動家を招請して、日韓比較の視点から両国の「働き方改革」に関する国際シンポジウムを開催する予定である。このシンポジウムを通して、これまでの研究成果を公表するとともに、日韓両国の「働き方改革」の実態と問題点を明らかにしたい。

Causes of Carryover

本研究課題の成果発表の一つでもある、「日韓『働き方改革』フォーラム」という国際シンポジウムを2019年度に開催予定で、その開催費用の一部とするため次年度使用額が生じた。2019年度、上記国際シンポジウム開催のために使用する予定である。

  • Research Products

    (1 results)

All 2019

All Journal Article (1 results) (of which Open Access: 1 results)

  • [Journal Article] ジェンダーの視点から見た韓国における女性周辺労働者の労働の実態と組織化2019

    • Author(s)
      横田伸子
    • Journal Title

      関西学院大学 社会学部紀要

      Volume: 131号 Pages: 65-79

    • Open Access

URL: 

Published: 2019-12-27  

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