2019 Fiscal Year Research-status Report
サード・セクター組織の特性を生かした評価と公契約のあり方に関する日英比較研究
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17K04260
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
原田 晃樹 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (20340416)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 真理子 四日市大学, 総合政策学部, 教授 (30340409)
藤井 敦史 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (60292190)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 社会的インパクト評価 / 公契約 / 地方自治 / パートナーシップ / 自治 / 委託 / 中間支援 / 社会的企業 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成31(令和元)年度は、次の調査研究に取り組んだ。 第一に、アカウンタビリティ論や社会的インパクト評価関連を中心に評価論のレビューを行った。1)近年の社会的インパクト評価は理論的な枠組みが確立されているわけではなく、適切な評価指標が整備されているわけでもないこと、2)社会的インパクト評価は評価結果の数値化を重視するが、その背景にはグローバル化による標準化志向と無関係ではないこと等を確認した。 第二に、社会包摂を主たるミッションに置く社会的企業として、ワーカーズコレクティブ・ネットワークジャパンの関係者と延べ4回研究会を開催し、民主的なガバナンス構造を有する組織がいかにして一定の事業高を確保できるかを検討した。また、下川町・奥尻町等における若年層の定住策として、移住と地域密着型高校の実態を把握した。これらから、参加型民主主義は必ずしも経営合理化と対立する概念ではないこと、公的セクターによる人材確保の取り組みの重要性を把握した。 第三に、サード・セクターのインフラストラクチャーである(特)市民社会研究所の取組を参与観察し、若者就労支援の実態と新しい事業にチャレンジする際の課題を把握した。 第四に、英国バーミンガム市、タワーハムレッツ区、グロスターシャー県を対象に、公契約の実態について契約担当者へのインタビューを行った。ここから、社会的インパクト評価は日本で喧伝されているような厳格な測定手法として導入されているわけではなく、公契約に社会的価値を反映させるという政策的な判断に依拠して導入されていること、評価する側と受ける側の関係は、制度上典型的なプリンシパル=エージェンシーのそれであるが、他方で、評価に価格以外の要素が含まれることで解釈の余地が拡大し、評価を受ける側が自らの正当性を主張するツールとして機能する可能性があることも把握できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
英国自治体の社会的価値に対する評価の実態については、前年度に引きつづきインタビュー調査と文献調査からいくつかの重要な示唆を得ることができた。また、国内の社会的企業や地域再生の調査についても、関係者からの協力を得て調査することができた。 ただし、国内外の調査は、最終年度にも継続調査を行い、その成果をとりまとめることにしている。今般の新型コロナウイルス対応の影響により、次年度予定している英国調査と国内調査の実施が危ぶまれているため、次年度においては、予定していた調査の大幅な変更が必要になることが考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、これまでの調査研究の継続調査を行うことで、成果をとりまとめることを予定していた。具体的には、夏季に渡英して英国自治体やサード・セクターの中間支援組織に対して追加のインタビュー調査を行い、これまでの調査において補完すべき事項に対処する予定であった。また、国内調査においては、ワーカーズコレクティブ・ネットワークジャパンの関係者との研究会と共同インタビュー調査や、農山村地域への継続調査も予定していた。これらは、いずれも現在までにアポイント等の段取は終えている。 しかしながら、今般の新型コロナウイルス対応の影響により、予定通り実施できない可能性がある。仮に予定通り実施できなかった場合には、やむを得ず文献調査等で代替せざるを得なくなることが考えられるが、具体的には状況を見て判断したい。
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Causes of Carryover |
研究分担者の松井が所属している(特)みえNPOネットワークセンター及び東海市民社会ネットワークと英国の類似の取組との比較調査を行い、インフラストラクチャー組織の機能分析を行う予定であったが、組織体制が不十分なため、次年度に持ち越すことになった。令和2年度はこれを実施するとともに、英国の類似の組織にも再度インタビュー調査を行い、国際比較の分析枠組みを検討する予定である。
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