2020 Fiscal Year Research-status Report
The Research on the Training Program of Social Workers in Working with Deaf and Hard of Hearing People
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17K04282
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Research Institution | Shitennoji University |
Principal Investigator |
原 順子 四天王寺大学, 人文社会学部, 教授 (60309359)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 聴覚障害ソーシャルワーク / 文化モデルアプローチ / ろう文化 / ろう者・難聴者等 / 養成プログラム / 多文化ソーシャルワーク / ろう者学 |
Outline of Annual Research Achievements |
聴覚障害ソーシャルワーカー養成に関する調査研究は、前年度までの情報収集に加え、ろう者学および聴覚障害者を対象としたソーシャルワーカー養成大学のカリキュラム動向について詳細に示した高山亨太(2019)の博士論文により、本研究にとり非常に有益な根拠資料を得ることができた。これらを基にアメリカでの養成教育において、聴覚障害者に対する視点が医学モデルから文化モデルへと変遷した過程が明確になるとともに、研究代表者が提唱している文化モデルアプローチが聴覚障害ソーシャルワーカーにとって重要なアプローチであるとの根拠となった。本研究の養成プログラム開発においては、文化モデルアプローチの修得に必要なプログラム作成に焦点を当てることが妥当であるとの結論に至った。 ソーシャルワーク理論研究としては、多様な文化的背景をもつクライエントに対するソーシャルワーク理論である多文化ソーシャルワーク理論をレビューした結果、多様な文化的背景の対象カテゴリーの一つに「障害disability」が含まれていることが判明した。社会の多数派文化とは違う少数派のクライエントの文化に着目する多文化ソーシャルワークは聴覚障害に限らず障害全般において説明できるのである。故に「ろう文化」という独自の文化を重視するソーシャルワーカーに必要なカルチュラル・コンピテンスとして、多文化ソーシャルワークにおける文化モデルアプローチが重要であることが説明でき論文に纏めることができた。この論文は研究分担者としての他の科研研究成果であるが、本研究の内容も含んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染拡大のため、参加予定であった国際会議(ICED:INTERNATIONAL CONGRESS ON THE EDUCATION OF THE DEAF)が翌年(2021年)に延期となり、海外渡航も不可能になったために、海外での聴覚障害ソーシャルワーカーへのインタビュー調査並びに情報収集ができなかった。国内でのインタビュー調査も対面でのインタビュー調査が困難であり、オンラインでのインタビュー調査については、調査対象者の聴覚障害ソーシャルワーカーがオンラインに慣れておらず、加えて手話通訳者を介在する場合のオンライン設定が複雑な操作を必要とし実施することができなかった。その結果、文献研究およびインターネット検索が本研究の中心となった。また、勤務校では初めてのオンライン授業実施となり、その授業準備に追われることで研究時間を捻出しがたい状況であったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
幸いにも本研究の延長が承認されたので、クライエントである聴覚障害者を理解するためのろう者学の内容を精査するとともに、文化モデルアプローチによる聴覚障害ソーシャルワーカーの養成プログラムを完成させる。これを基に聴覚障害者への相談支援を行っているソーシャルワーカー対象の研修会を開催し、研修受講者の養成プログラムについての意見を聞き、それを反映させた内容に修正することでPDCAを回していく。但し新型コロナウィルス感染状況により研修会開催は困難かもしれないので、その場合は、聴覚障害ソーシャルワーカーに養成プログラムを閲覧して貰い、意見を聴取するヒアリング形式で検証する。最終的には聴覚障害ソーシャルワーカーにとって必須となるスペシフィックな学修内容を纏める予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大が予想以上に収束に至らず、海外(オーストラリア)で開催される国際会議が次年度に延期となったため、旅費の支出が生じなかったためである。次年度にはオンライン開催での国際会議の参加費、ソーシャルワーカー養成のプログラムの報告書作成にかかる費用、聴覚障害ソーシャルワーカーへのヒアリング実施時の謝礼等を支出する予定である。
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Research Products
(1 results)