2017 Fiscal Year Research-status Report
医療行為の選択と同意における判断能力の不十分な人への意思決定支援に関する研究
Project/Area Number |
17K04295
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Research Institution | Beppu University |
Principal Investigator |
林 真帆 別府大学, 文学部, 教授 (50523304)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
織原 保尚 別府大学, 文学部, 准教授 (50586823)
尾口 昌康 別府大学, 文学部, 講師 (10567225)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 意思決定支援 / 個人の尊重 / 権利の制限 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、判断能力の不十分な人への意思決定支援に関する文献研究を中心に内容の整理と分析に取り組んだ。それを踏まえ、(1)成年後見制度などの意志決定支援をめぐる法制度について概観した上で、意思決定支援に関する法的問題を成年後見制度、障害者権利条約、憲法などから分析した。また、(2)精神保健福祉法の変遷から精神障害者の自己決定権をめぐる課題について整理した。加えて(3)イギリス意思能力法と意思決定支援に関するソーシャルワークの文献をもとにアンケート内容の作成に取り組んだ。 研究成果とし(1)憲法の理念からすれば、憲法13条と憲法29条を根拠に判断能力の不十分な人に対する権利の制限を最低限にとどめ、その上で、状況に応じた意思決定に対する個別的な支援がなされるような制度の構築が求められる。しかし、現状の法制度はいずれも判断能力の不十分な人に対する意思決定において場面ごとの支援については不十分であることを明示できた。(2)医療領域において自己決定権の尊重が未だ不十分な要因には、本人の病状悪化による権利制限があることを指摘し、治療が優先される場における自己決定支援の限界を示した。(3)医療領域で働くソーシャルワーカーへのアンケート調査内容について以下の4つの項目を設定し、20項目の質問を設定した。①意思決定能力の有無を判断するプロセス、②意思決定能力を判断するための仕組み、③医療の選択と同意に関する現状、④判断能力の不十分な人への援助の実際 これらを踏まえ、平成30年、医療機関で働くソーシャルワーカーへのアンケート調査の実施と分析にて、意思決定支援における国内の現状と課題を把握する予定である。また、全国障害者団体協議会などへのヒアリング調査を実施し、個人の尊重が担保される意思決定支援について検討を重ねる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度は、先行研究をもとにアンケート調査を実施する予定であったが、各ガイドライン、海外文献の精査に時間を要し、それに伴いアンケート内容の作成に大幅な遅れが生じた。また、年度内にアンケート内容について学内研究倫理委員会の承認を得ることができなかったことも遅れの原因である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、アンケート調査の実施と分析に着手しその成果をまとめる。また、その成果をもってイギリスでの現地調査を実施し、わが国の現状と照らし合わせて制度と実践上の課題を明らかにする。統計的分析においては、統計学の研究協力員を配置し分析の精緻化を図る。質的分析においては、有識者の助言を得ながら進めていく。
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Causes of Carryover |
今年度、アンケート調査の実施を予定していたが、わが国の現状の精査が進まずアンケート内容作成に時間を要し、次年度に繰り越しとなった。 次年度はアンケート調査の実施に加え、イギリスの現地調査を10月に予定していることからも、使用額増となっている。
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Research Products
(2 results)