2017 Fiscal Year Research-status Report
高等教育における「真正なる学びあい」の成立過程の解明と実践モデルの構築
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17K04352
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
伊藤 崇達 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (70321148)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 自己調整学習 / アクティブ・ラーニング / 動機づけ / 社会的に共有された学びの調整 / 共調整 / 協働学習 / 動機づけ調整 / 学習方略 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の高等教育では,アクティブ・ラーニングが理念として掲げられてきており,その実証的な検討が求められている。本研究は,「自己調整学習(self-regulated learning)」と「社会的に共有された学びの調整(socially shared regulation of learning)」をグランドセオリーとし,「I」「You」「We」の学び手の3視点から「真正なる学びあい」がいかに成立するかについて,心理尺度をもとに実証的に検討を行った。 尺度の作成にあたっては,「I」視点が,「自己調整学習」,「You」視点が「共調整された学習(co-regulated learning)」,「We」視点が「社会的に共有された学びの調整」によるものと捉え,調整を支えている中核的な心理的要素として,「動機づけ」と「動機づけ調整方略」に焦点をあてることとした。動機づけの自己調整に関する研究では,内発的な動機づけ,すなわち,興味や関心を高めるような自己調整がパフォーマンスの向上において重要であることが明らかにされている。グループ活動において,自分自身,グループのメンバー,グループの全体のそれぞれの動機づけをいかに調整しているかについて,新たに尺度を作成し,検討を行った。学びあいの真正性は,実社会での学びあいとの接続を考慮することで検討することとした。具体的には,すでに職を得ている社会人にも同様の調査を行い,大学生との比較検証によって明らかにした。グループ活動への自律的動機づけ,グループ活動のパフォーマンス指標,期待,価値といった変数との関連について検証を行い,高等教育における実践への示唆を得たところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に沿っておおむね順調に進めてきている。平成29年度に作成した尺度は,学びあいを実証的に明らかにしていく有用な評価指標となりうる。これらの検討結果をもとに,実際の学習場面における社会的に共有された学びの調整について,質的な分析を進めるべく,準備を行ってきているところである。次年度以降の介入研究に発展できるように,学習と授業実践のプロセスを精緻に捉える枠組みについて検討を進めてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
実社会の現場で働いている社会人に対して,大学生の学びあい,すなわち,グループ活動への自律的動機づけ,グループ活動のパフォーマンス,期待,価値などにおける課題や特徴が明らかになってきている。これらの知見をふまえることで,高等教育において求められる「社会的に共有された学びの調整」のあり方について,質的な分析アプローチによってさらに解明していく予定である。
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Causes of Carryover |
平成29年度に人件費・謝金等の支出を計上していたが,作業がスムーズに進んだため,予定していた額の予算を要しなかった。また,平成30年度は,質的データの整理と分析を行う計画であり,より多くの支出が見込まれる。繰り越した分は,そちらへ充当することが合理的であると判断した。本年度も当初の計画に沿って予算を執行していく予定である。
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Research Products
(2 results)