2019 Fiscal Year Research-status Report
高等教育における「真正なる学びあい」の成立過程の解明と実践モデルの構築
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17K04352
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 崇達 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (70321148)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 自己調整学習 / アクティブ・ラーニング / 動機づけ調整 / 社会的に共有された学びの調整 / 共調整 / 協働学習 / 内省支援 / ピア・ラーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
学びあいの真正性に迫るには,社会との関係について考慮する必要がある。実社会における学びを対象にした経営学研究(e.g., 中原・金井, 2009)では,近年,実証的な知見をもとに,内省支援の重要性が強調されてきている。本年度は,「真正なる学びあい」の成立を促す実践モデルを提示することをめざして,内省支援に働きかける大学授業を実践し,検証を進めてきたところである。内省支援は,学びのパートナーのリフレクションの深まりを支えようとするかかわりのことをさしている。内省支援とともに,主体的な意欲でもって協働による活動に取り組める力も重要である。そして,協働のパートナーやチームの前向きなモティベーションを相互に調整し,支援できる力も実社会での学びあいには求められる。実践にあたっては,仲間どうしの学びあいであるピア・ラーニング(中谷・伊藤, 2013)による対話の機会を設け,いくつかの授業スタイルによって異なる視点の内省を促すことを試みた。質的,量的な変容の検証として,協同学習への動機づけ,動機づけの自己調整(self-regulation of motivation),共調整(co-regulation of motivation),社会的に共有された調整(socially shared regulation of motivation),自己効力感,学業的エンゲージメント(academic engagement)をはじめとした動機づけ関連要因やパフォーマンスに関する要因の測定を実施した。これらの要因間の関連を明らかにする分析を通じて,実社会において生涯に亘って「ともに主体的に学びあう力」とは何かという問いに迫り,高等教育における実践への示唆を見出してきているところである。今後,これらの成果をまとめて,学会発表や論文執筆などの形で公表できる準備を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
京都教育大学から九州大学へ異動した後の研究環境の再構築にあたって予想以上に多くの時間を要した。また,年度末には新型コロナウィルス感染症の流行があったため,研究の遂行が著しく困難になった。
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Strategy for Future Research Activity |
感染症の流行が続いており,オンラインの活用も視野に入れ,連携研究者と研究協力者との連携を緊密に行うようにする。役割分担とスケジュールを見直した上で,分析とまとめの作業を円滑に進めるようにし,学会発表や論文執筆の準備を確実に行えるようにする。
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Causes of Carryover |
新たな研究環境の構築と感染症の流行により,研究結果をまとめる作業に滞りが生じたため,研究成果の発表にかかる経費の支出が難しくなった。次年度には,学会発表や論文執筆の準備にかかる費用に使用する予定である。
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Remarks |
Nakaya, M., & Ito, T. (2019). Conclusion: Research and practice in educational psychology in Japan. AERA SSRL SIG Times Magazine August 2019, Volume 2, Issue 6, p.14.
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