2018 Fiscal Year Research-status Report
保育者のインクルーシブな環境意識を構築する巡回相談の実践的研究
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17K04360
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
三山 岳 愛知県立大学, 教育福祉学部, 准教授 (80582858)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | インクルーシブ保育 / 保育実践分析 / 質問紙調査 / インタビュー調査 / 相談モデルの構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では保育者が障害児や気になる子を保育の中で気になるようになるプロセス、また、保育の状況をインクルーシブな環境だと捉えるようになるプロセスを明らかにし、その認知過程に効果的に介入することで、障害児の発達支援に関わる保育者の力量や専門性を高める相談モデルの構築をめざしている。 平成30年度は多様性を包摂するインクルーシブ保育を実践していると考えられる幼稚園に前年度参与観察し、子ども同士の対話的関係の形成プロセスに焦点を当て、保育者にインタビュー調査した結果、保育者が子どもとの対話的関係が見られた場面について、子どもの発達やこの先の育ちも念頭に、徹底した議論を行い、考察を深めることで、子ども主体の保育が実現していくことを明らかにした。 また、これも前年度から10万人超の自治体(2か所)の発達支援担当部署と共同で開発した質問紙を用いて、インクルーシブな保育環境についての意識を測る質問紙調査を1000人規模で実施し、統計的な分析を進めた。その結果、従来のインクルーシブな意識を測る尺度で見られた因子とは性質が異なる因子が明確に抽出され、インクルーシブな環境をつくるうえで必要な意識についての知見が得られた。またこの結果を自治体の発達支援担当部署とも共有し、これらの意識をさらに深めるための保育者インタビュー調査と、その結果を踏まえた相談モデルの検討を行うことになった。 これらの成果は平成30年度の学会発表(海外発表含む)に加え、31年度における学会発表や論文発表、出版書籍という形での発表ができるように準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は質問紙調査の実施、幼稚園の参与観察とインタビュー調査の分析を行う予定であった。質問紙調査は関わっている自治体と緊密に連携を取りながら、自治体に所属するすべての保育職(保育士・幼稚園教諭・保育教諭)を対象にした実施を目指した。その結果、民間の1園を除いたすべての保育者に調査を依頼でき、95%近くの高い回収率が得られ、1000人を超える専門職による回答を得ることができた。なお、この回収率に関しては、大学の倫理審査委員会の審査を経て、プライバシーに十分に配慮したうえでの結果であり、保育者との間の調査における信頼関係も築けたことを示しており、質問紙作成と実施のプロセスに関しても大きな成果があった。また幼稚園の調査に対しての研究発表を海外の保育関連学会でも発表でき、インクルーシブに関する知見を得ることができた。 上記のことから、昨年度はおおむね順調に研究を進展させることができたと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は順調に研究を進められたが、初年度の29年度の研究計画に遅れが認められたため、研究期間の1年延長を願い出る方針は変わりがない。平成31年度はこれまでの研究結果を関連学会のシンポジウムやポスター、口頭発表などで発信するだけでなく、さらにその成果を論文化する重要な年と位置付け、学会誌への積極的な投稿を図っていきたいと考えている。 国際学会での発表や海外のインクルーシブ保育関連の情報収集は引き続き行っていきたいと考えている。今年度の海外での学会参加は予定していないが、令和2年度の発表に向けて今年度中のエントリーを進めるなどの研究活動は引き続き行っていきたい。さらに国内では保育関連の国際学会が開催されるので、そちらでの学会参加や研究発表などについて検討することを進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度は国際学会(EECERA)での発表があり、前年度よりの繰越額を活用しながら旅費として使用した。次年度の使用額が3万5千円程度生じたが、当初計画における当該年度の旅費より大幅に当該年度使用額が増えた分を、前年度分の繰越額を活用しつつ予算内に収めた結果の残額としては妥当な次年度使用額と考える。 次年度はインタビュー調査を予定していることから書き起こし代などの人件費が増えることが予想されることと、当該年度行った質問紙調査の論文化を行うため、統計ソフトの購入や書籍の購入が予定されるため、この次年度使用額はこのために活用する予定である。
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Research Products
(4 results)