2018 Fiscal Year Research-status Report
高齢者のライフレビューが生起するとき―奏功機序の解明と技法論の構築に向けて―
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17K04424
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
林 智一 香川大学, 医学部, 教授 (70274743)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高齢者 / ライフレビュー / 介護老人保健施設 / 奏功機序モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
1.研究協力者の募集 介護老人保健施設に依頼し、研究協力者を募集した。本年度は、認知症やうつ病のない施設利用者(健常群)8名であった。 2.ライフレビュー面接の実施 (1)面接場所 研究協力者に移動の負担が少なく、なじみのある環境でストレスも生じにくいと思われるため、介護老人保健施 設内の面接室にて、臨床心理士である申請者がライフレビュー面接を実施した。(2)面接回数 原則として週1回50分のライフレビュー面接を、研究協力者ごと に5回おこなった。なお、5回の面接でライフレビューが展開することは、林(2012)ですでに示されている。(3)ライフレビュー面接の内容 同意を得た上で、ICレコーダで面接を録音した。初回には、定式化した記録用紙を用意し、インテイクとして申請者から半構造的な質問を中心に、家族歴、生育史を聴取した。以後は研究協力者の語りやすい年代、エピソードから回顧してもらった。なお、申請者のおこなうライフレビュー面接は、力動的個人心理療法にライフレビューの観点を導入したものである。過去の回顧だけに固執せず、現在や未来の話題が語られたときには、そこにも傾聴した。とりわけ、過去を語ることによって現在や未来のとらえ方がどう変化するかという点に注目した。 3.本年度の面接者数 本年度は、計8名の面接を行った。それらのデータをもとに、「高齢者に対するライフレビュー面接5回法における防衛をどう考えるか―研究のための面接で語らない自由と権利―」(日本理論心理学会)ほか、九州心理学会、中国四国心理学、日本老年臨床心理学会の、計4回の学会発表を行った。また、論文として「高齢者のライフレビュー面接5回法における直面化に関する考察」(香川大学教育学部研究報告第Ⅰ部第149号)、「ライフレビュー面接5回法に見られた高齢者の死生観」(香川大学教育学部研究報告第Ⅰ部第151号)の、計2本を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ当初予定の8名の面接を実施した。ただし、そのうち2名は、介護老人保健施設退所のため1,2回で中断した事例である。したがって、本研究のデータとしての条件を満たした事例は6名である。事例数としては予定より少なくなったが、学会発表や論文発表は順調である。以上から、おおむね順調に研究が進展しているものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
1.平成31(令和元)年度 今年度に引き続き、健常群の事例集積を継続する。また、事例研究として報告できる場合には、学会発表や所属大学の研究紀要への報告を検討する。 2.以降の計画 (1)事例の集積 健常群のライフレビュー面接の事例集積をおこなう。1年間で10数名を予定している。5年の研究計画の前半2年は、認知症やうつ病のない健常群の事例集積を目指していたが、健常群のデータ数が少ないため、さらに健常群の事例集積を図る。次年度以降、健常群と並行して認知症の診断を受けた認知症群に対してもライフレビュー面接をおこなう計画である。(2)事例研究としての発表 事例研究として報告する意義のある事例については、随時、学会発表などをおこなう。(3)分析と考察 ある程度の事例数が得られた段階で分析を開始する。分析と考察に関しては、①個々のライフレビュー面接の事例研究と、②集積した事例全体からのライフレビュー・プロセスや奏功機序の特徴の抽出、整理、類型化、③ライフレビューを促進、援助するために有効な、応答レベルでの臨床技法の検討、④以上に関する健常群、認知症群の比較検討の4段階が想定される。 3.最終年度 最終年度である5年目には、研究成果報告書を作成し、関係機関(介護老人保健施設、大学など)に配布することを予定している。
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Causes of Carryover |
使用額の端数が残額として残った。次年度、研究を継続する中で心理学関連図書や学会出張旅費に使用する。
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Research Products
(6 results)