2017 Fiscal Year Research-status Report
「対話による探究の授業」を活用した学級の人間関係育成の実践支援と現象学的研究
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17K04524
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
田端 健人 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (50344742)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | グループ対話 / 探究のコミュニティ / 現象学 / 質的研究 / 学級コミュニティ / 思考 / 言語活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
学級コミュニティでの対話による探究の授業に関して、当該年度前半は宮城県内、後半は米国ハワイにおいて、実践支援とアクションリサーチとを行なった。対話方法は、「子どもの哲学(philosophy for/with children)」通称「p4c(ピーフォーシー)」と呼ばれるもので、1970年後半以来世界的に広まっているが、ハワイで改良されたヴァージョンが研究対象である。宮城県では、4年前に本研究代表者である田端も加わって構築した実践者のネットワーク、「p4cみやぎ」があり、ハワイ大学のUehiro Academyを拠点とした実践者のネットワーク、「p4cハワイ」と連携している。 本年度前半は、p4cみやぎの実践校の支援と質的研究を行なった。その中で、この対話の授業をきっかけとした小学4年生の学級の人間関係が改善される過程を観察できた。そこでは、「問題行動」を繰り返していた小学4年生が、対話のルールややり方を身につけることで、他児童との関係が改善し、問題行動も減少していった。年度後半の半年間は、ハワイ大学にて在外研究を行い、ワイキキ小学校やカイルア高校などp4cハワイの実践校を参与観察し、p4cハワイの創設者であるトーマス・ジャクソン博士はじめ、多くの実践者や研究者と意見交換を行った。特に、10年以上にわたりp4cに取り組んでいるワイキキ小学校での対話の授業は、日本の学校ではほとんど見られない構造と質をもっていることがわかった。 研究方法としての現象学についても研究を進め、一対一など少人数の対話ではなく、10名から20名ほどからなる「コミュニティ対話」を記述分析する概念枠組みについて考察し、学会発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
米国ハワイ州での6ヶ月間の在外研究は、当初の期待以上の成果があり、予期しなかった今後の展望につながった。特に、ワイキキ小学校での質の高いコミュニティ対話は、日本の対話的授業よりも数段進んでおり、昨今の「アクティブ・ラーニング」や「プロジェクト学習」の優良事例となることがわかった。また、実践者レベルでのネットワークが海外に広がることで、日本でのコミュニティ対話を国際的に展開する可能性がひらけた。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目の実践支援と参与観察を継続する。重点的には、①1年目に国内外の研究で得たデータの記述分析と成果発表、②p4cに関する海外での先行研究の紹介、③1年目に得た知見に基づく新たなコミュニティ対話の創出、などを計画している。特に③に関しては、海外の生徒や教師を招き入れた国際的な対話の実践を展開する(対話の国際化)。数少ない先行研究は、第二言語習得において、哲学的対話が効果的であることを示しており、英語による国際的な探究のコミュニティ対話の実践により、英語と日本語による聞く・話す能力、思考力、異なる他者に対するケア能力などが一体的に向上し、コミュニティの人間関係がよりよいものに形成される実践例の創出を見込んでいる。
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Causes of Carryover |
6ヶ月間の在外研究のため、国内での学会発表ができず、その準備のための図書購入と国内旅費に残額が出た。次年度は、この残額を海外での学会発表に当てる。 経費の使用計画としては、①関連図書の購入、②学会発表のための国内外の旅費、③ハワイ州の学校でのアクションリサーチの継続、ならびに生徒学生レベルでの対話の国際交流のための旅費、④英語論文のネイティブチェック、記録や記録の文字起こし等の謝金、⑤オンラインでのビデオ会議が、対話の国際化に有効であるため、Webカメラ等の必要機材の購入や通信費、などである。
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