2018 Fiscal Year Research-status Report
新教育運動における「国際化」の進展と「郷土」形成論の相克に関する比較史的研究
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17K04550
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
渡邊 隆信 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (30294268)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 洋子 福山平成大学, 福祉健康学部, 教授 (40311823)
宮本 健市郎 関西学院大学, 教育学部, 教授 (50229887)
山名 淳 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (80240050)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 新教育運動 / 国際化 / 郷土 / ドイツ / アメリカ / イギリス / 日本 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「新教育運動期における『国際化』の進展と『郷土』形成論の相克に関する比較史的研究」というテーマのもと、具体的な研究課題として以下の3点を設定した。すなわち、①新教育運動における「国際化」の進展の具体像を解明すること、②新教育運動における「郷土」形成論の特質を解明し、「郷土」と「国際化」の関係について検討すること、③新教育運動における「郷土」教育の実践を解明すること、である。平成29年度に本研究に関わる先行研究を網羅的に収集し検討したことを踏まえて、30年度は、具体的な研究対象を決定したうえで、それに関する資料の収集し順次読解を行った。 比較教育史の観点から、当初の計画通り、ドイツ、イギリス、アメリカ、日本の4カ国の新教育実践と思想を検討した。具体的には、ドイツについては、ドレスデンのデューラー校におけるクルト・シューマンに焦点をあて、彼の郷土教育実践と国際的な平和運動への関与について研究する枠組みを検討した。イギリスについては、ハリエッタ・フィンレイ=ジョンソンの劇化学習法に着目し、そこに内在する「郷土」形成思想について分析を進めた。アメリカについては、ジュセフ・リーとクラレンス・A・ペリーの思想を取り上げ、ナショナリズムとインターナショナリズムの関係について考察を深めた。日本については、鳥取県倉吉市の成徳小学校を事例として、地方公立小学校における郷土と国際の問題を「文化科」という科目の理念と実践から考察した。 研究を進めるにあたり、6月と1月に神戸大学に4人のメンバーが集まって研究会を開催した。研究会では、それぞれの研究の進捗状況を発表するとともに、英米独日4カ国にまたがる比較教育史研究の枠組みについて検討した。研究会の前後には電子メールや電話を使って相互に研究上のアドバイスを行うとともに、共通に参加する学会の機会を捉えて研究の方向性について意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究2年目である平成30年度は、前年度におこなった研究の基礎作業を踏まえて、比較教育史の観点から英米独日のそれぞれについて、具体的な研究対象を決定し、それに直接・間接に関連する先行研究をさらに詳しく調査するとともに、一次資料の収集を進めることができた。 各国の研究対象によって、「国際」と「郷土」のどちらに力点が置かれるかは一様ではないが、各国の特色を踏まえて「国際」と「郷土」の関係性を分析するための枠組みについては、2019年度にさらに精査していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
研究3年目となる2019年度は、平成30年度に引き続き、①新教育運動における「国際化」の進展の具体像を解明すること、②新教育運動における「郷土」形成論の特質を解明し、「郷土」と「国際化」の関係について検討すること、③新教育運動における「郷土」教育の実践を解明すること、の3つの課題に同時並行で取り組む。その際、特に③の「郷土」教育につながる実践の内容と特色を、各国の研究対象に即して実証的に解明していく予定である。 研究の推進にあたっては、2019年度も電子メールや電話でこまめに研究状況を報告し合うとともに、5月と8月には神戸大学に研究メンバー4人で集まり、研究会を開催したい。そのうえで、秋の学会で研究成果を発表し、他の研究者から批判と助言を仰ぎたい。具体的には、教育史学会のラウンドテーブルで発表する予定である。学会発表を経た上で、年末から年始にかけて、研究成果を論文化し、冊子体の報告書にまとめる。
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた理由はドイツとアメリカでの現地調査に関するものである。 ドイツについては、平成31年1月にベルリンの教育史研究図書館等に調査に行ったが、別の経費により旅費をまかなうことができた。2019年度への繰り越し額については、9月にドレスデンでの資料調査に使用する予定である。 アメリカについては、平成30年度はナショナリズムとインターナショナリズムの関係について考察を深めたが、アメリカの史料館等に所蔵されている相当の資料がPDFファイルとして日本国内から入手できたため、平成30年度の渡米を見送った。2019年度は国内での調査費と図書購入に充てる予定である。
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Research Products
(15 results)