2019 Fiscal Year Research-status Report
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17K04552
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
河合 務 鳥取大学, 地域学部, 准教授 (10372674)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 学校衛生国際会議 / リスク / 学習 / 疲労 / 規律 / シャルル・シャボ / 衛生教育 / 姿勢 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、20世紀初頭に4回にわたって開催された学校衛生国際会議のフランス代表団の中心人物で教育学者のシャルル・シャボ(1857-1924)が第2回国際会議(1907年、ロンドン)での議論の状況をレビューし自らの主張をも展開した1908年の論考「衛生と教育学(第2回学校衛生国際会議)」の分析を通して、当時の学校衛生論において何が「リスク」だと考えられていたのかについて検討し、その研究成果を拙稿「学校衛生論におけるリスク概念と教育 ――シャルル・シャボの学習(travail)論の検討――」『地域学論集(鳥取大学地域学部紀要)』第16巻第2号、2020年41-48頁に発表した。分析の結果として、当時の学校衛生論における「リスク」とは感染症・伝染病、結核、近視、脊柱側湾症、潜在的ノイローゼ(神経衰弱)、アデノイド(増殖性扁桃肥大症)、蛋白尿症など身体衛生面から精神衛生面にわたるものであった。また,長時間の座学を学校が強いているという認識から「学習(travail)」までも子どもの健康へのリスクとなり得ると考えられていたことを上記拙稿で指摘した。また、シャボが第2回国際会議開催の時点では「学習」との関連における疲労問題に関する生理学・心理学の知見は教育現場に適用できるレベルの成果をあげるには至っていないとしたうえで、教育学(pédagogie)と教師の主要な任務が子どもの身体の強化に向けた規律(discipline)にあるとする議論を展開していたことをも拙稿で指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の全体計画と本年度(2019年度)当初の計画に照らして本年度得られた研究成果をも考慮して総合的に評価し概ね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、過去3年間の研究成果として発表した3本の論文①拙稿「学校衛生と子ども観 ――20世紀初頭フランスにおける子どもの疲労問題と「知的衛生」――」『地域学論集(鳥取大学地域学部紀要)』第14巻第2号、2018年167-177頁、②拙稿「学校衛生と産育――乳幼児死亡の回避可能性をめぐる20世紀初頭フランスの動向――」『地域学論集(鳥取大学地域学部紀要)』第15巻第1号、2018年93-100頁、③拙稿「学校衛生論におけるリスク概念と教育 ――シャルル・シャボの学習(travail)論の検討――」『地域学論集(鳥取大学地域学部紀要)』第16巻第2号、2020年41-48頁のうち、特に①と③で得られた知見をベースとして20世紀初頭フランスにおける子どもの学習上のさまざまなリスクに当時の教育学がどのように対峙しようとしていたのかという問いのもとに教員養成向けテキストにおける学校衛生の位置づけの分析に着手する予定である。
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Causes of Carryover |
研究成果を中間的にまとめる段階で当初の予定以上に時間がかかった結果として研究遂行に資する一部の史料の発注が次年度に繰り越されたため次年度使用額が生じた。この史料の入手に繰り越した金額を使用する予定である。
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