2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K04560
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
若木 常佳 福岡教育大学, 大学院教育学研究科, 教授 (90454579)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 省察の定義 / 省察の具体的ツールと意義 / 省察の学修内容と道筋 / 省察を促進・阻害する要因 / 省察に向かうパターン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,省察を促進・阻害する要因を解明することである。 まず研究内容である。最初に省察(リフレクション 以下同様)の定義を追究し,それを踏まえ省察の学修の道筋の導出と省察を実施するための具体的ツールとその意義の整理を行った。次に,上記の整理を踏まえ,省察の初期段階として,省察の学修直後に生じる院生の感覚と院生の自己と他者に対して生じた意識について,院生の記述やインタビューを用いた調査を実施した。また,継続段階については,資料(山崎直人の週案資料)の分析に着手した。さらに,省察を促進・阻害する要因の導出については,対象を院生とオランダのイエナプラン教育に関係した人々に広げ,省察を促進・阻害する要因の導出を試みた。 次に研究成果である。上記の研究の成果として,省察の定義を定めたこと,省察の具体的ツールと意義を整理したこと,省察の初期段階に有効な学修内容と道筋,継続段階にまで作用する学修内容の順序性の問題を捉えたことが挙げられる。また,初期段階における省察を促進・阻害する要因とそれに伴う院生のパターンについては,未だ仮説的ではあるものの,要因とパターンのそれぞれを推定した。 研究成果の発表は次のとおりである。省察の定義については,「教師が行うリフレクションについて-KorthagenとKegan-から」(紀要)に投稿,省察を実施するための具体的ツールとその意義の整理については,学会発表(日本教師教育学会)を行なった。また,省察の学修内容と道筋の導出と省察の学修直後に生じる院生の感覚と院生の自己と他者に対して生じた意識については,「組織の質を高めるための教職大学院における人材育成―リフレクションが育てる教師の意識と意志―」(全国大学国語教育学会編)にまとめた。さらに,資料(山崎直人の週案資料)の分析については,その一部を「Y氏の記録(週案)-1年目-」(年報)にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
29年度の研究計画は,初期段階と継続段階それぞれの省察を促進・阻害する要因の推定に取り組むことであり,そのために活用するのは,①院生の記述資料,②山﨑氏からの寄贈資料(20年分の週案),③オランダのイエナプラン教育関係者からのインタビュー内容である。 ①の分析結果から,初期段階における省察を促進・阻害する要因の推定とそれに伴う院生のパターンを推察することができた。②と③と以前からの自身の研究内容を統合し,継続段階にまで作用する初期段階の学修内容の順序性の問題を明らかにすることができた。 また,当初の予定にはあげていなかった「省察の定義を定めたこと,省察の具体的ツールと意義を整理したこと」により,今後,省察を促進・阻害する要因を追究する上で,新たに考えるべき要素についても意識を向けることができた。 予定した学会発表が1点できなかった(理由は,勤務先の入試と日程が重なったため)ことはあるが,以上のことから,概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず,前年度で仮説的に捉えている初期段階における省察を促進・阻害する要因とそれに伴う院生のパターンについては,今年度入学生を対象として再検討と精査を行う。その結果は,学会(中国四国教育学会 11/17-18島根大学)において,「省察の促進と阻害の要因とそれが生み出すパターン」として発表し,学会での協議を経て論文として発表する予定である。 また,省察を促進する要因の解明については,オランダでのイエナプラン教育における教師教育におけるシステムを来年度に引き続いて行うこと,新たに東京都大島町立つつじ小学校の勤務者や富山大学特別支援学校の教員へのインタビュー行うことを通して,省察の促進に必要な環境などを継続して調査する。 加えて,省察の継続段階についての省察を促進・阻害する要因については,提供された資料(山崎直人の週案資料)の分析によって,省察を継続する過程で直面する課題や内的動機等を解明するとともに,「免疫マップ」を併用した活動を院生の学修過程を設定し,省察を阻害する要因についても追究したい。
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Causes of Carryover |
(理由) 出席を予定した学会(中国四国教育学会)の開催日が,勤務している大学院の入試と重なったため,旅費を使わなかったためと,オランダへの出張での通訳への謝金が,「参加費」の中に組み込まれており,必要なくなったためである。 (使用計画) 30年度での情報収集箇所を増やし,そのための出張旅費として用いる。
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