2018 Fiscal Year Research-status Report
沖縄における「格差と学び」をめぐる臨床教育学研究ー教師教育の質的向上をめざして
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17K04561
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
村上 呂里 琉球大学, 教育学部, 教授 (40219910)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊禮 三之 仁愛大学, 人間生活学部, 教授 (00456435)
望月 道浩 琉球大学, 教育学部, 准教授 (10352642)
辻 雄二 琉球大学, 教育学部, 教授 (20272122)
山口 剛史 琉球大学, 教育学部, 准教授 (20381197)
武藤 清吾 琉球大学, 教育学部, 教授 (30441504)
長谷川 裕 琉球大学, 人文社会学部, 教授 (30253933)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 格差 / 学び / 沖縄 / 貧困 / 学力問題 / ケア的アプローチ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、貧困問題を抱え、全国学力・学習状況調査出発時において厳しい結果となった小学校と琉球大学との10年目となる共同研究に基づくものである。本共同研究においては、「豊かな学び」を基本とする学校文化づくり、教員文化づくり、学びの文化づくり、読書文化づくりを掲げ、学びに対するケア論的アプローチを試みている。今年度は、共同研究を体験した若手教師にインタビュー調査を行い、その考察を「貧困問題と学力問題の間で苦悩する地域で求められる教師の専門性とは何か」というテーマで日本臨床教育学会で発表した。若手教師が、学習スタンダードを基準とする評価のまなざしによって「学級崩壊するのでは」と自信喪失するなか、先輩教師と子どもの小さなエピソードを日常的に共有する体験を通して「子どもに寄り添う」ことの意味を認識し、教室/教科の内だけにとどまらないまるごとの子どもから出発する「豊かな学び」づくりと実践の取り組み、その豊かさを教師の専門性として認識していくプロセスを明らかにした。 一方で管理職を含めて5年以内で移動となる教員集団において、また全国学力・学習状況調査等の学力調査で、性急に数値的成果が問われるなか「豊かな学び」の文化を継承する困難に直面している。そのため数値的検証として、フィールドとする小学校の10年間にわたる全国学力・学習状況調査調査の結果を分析し、「学校に行くのは楽しい」という学校体験への肯定的感覚を多くの子どもたちが相対的に「学力」の好結果を支えていた可能性や、「自分の考えを発表する機会」を設けるなど子どもたちの主体性を生かした授業を作り出していたことが、「学力」の好結果につながっていた可能性を明らかにした。学力格差を克服する上で、「温かい居場所のある学校づくり」「子ども理解に基づき、主体性を引き出す授業づくり」等が有効であることを数値的に検証し、その結果を小学校と共有した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、本研究がフィールドとする学校における実践事例集『海と空の小学校から学びとケアをつなぐ教育実践 自尊感情を育むカリキュラムマネジメント』(明石書店、2018年)を刊行し、今年度はその書に収められた実践事例を書いた教師たちへのインタビュー調査を行い、その分析を学会発表した。またこの学校における全国学力・学習状況量差の結果について詳細に検討した。そのような意味でおおむね順調に進展している。ただし論文化と成果の発信には至っておらず、最終年度にまとめに力を注ぐ必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は最終年度であるために、研究の論文化を行うとともに、困難を抱えた地域にねざした教師教育の質的向上に関するシンポジウムを行う予定である。その内容を広く学校現場や行政に発信し、研究内容を還元できるようにリーフレットを作成し、配付していきたい。
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Causes of Carryover |
今年度、校長職のために予算の執行が十分にできない研究分担者が生じた。次年度は、校長職を離れるため、研究時間を確保できるため、次年度において教員に対するインタビュー調査とそのとりまとめのために使用する。
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