2017 Fiscal Year Research-status Report
コンピテンシー概念の批判的検討とそれにもとづくブレンド型就労支援理論の構築
Project/Area Number |
17K04579
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Research Institution | Tokyo Kasei University |
Principal Investigator |
走井 洋一 東京家政大学, 家政学部, 教授 (30347843)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | キャリア形成 / 生活困窮者 / コンピテンシー / 就労支援 / 教育哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,①キャリア形成の目標・諸指標設定の前提となるコンピテンシー概念に関する先行研究・諸知見の収集・批判的検討,②ブレンド型就労支援の理論的枠組み構築の前提となる支援現場における先進的な取り組みの収集,を中心に行った。 ①については,まず,コンピテンシー概念に基づいて展開されている2017,2018(平成29,30)年告示学習指導要領までの審議経過を辿り,コンピテンシーがパフォーマンスを支えるものであるものの,そのパフォーマンスが社会依存的であること,コンピテンシーの積み上げがパフォーマンスを支えるという逆のアプローチになりうる危険性があることを明らかにした。 ②については,先進的な取り組みとして,Account3(イギリス・ロンドン)で参与観察を行った。Account3は移民女性の自立支援に従事している労働者協同組合であるが,プログラム(英会話,職業訓練,等)を提供するだけでなく,孤立を軸に自らの支援を方法論化する試みを行い,その要因を精神的・身体的健康,安全,住宅,家族,コミュニティ,文化,環境などに分析し,それらを議会,Social Hausing,若者支援組織などと連携し,支援資源を組み合わせ,支援していることを確認した。 また,国内調査では,はんしんワーカーズ(兵庫県尼崎市),暮らしづくりネットワーク北芝(大阪府箕面市),ワーカーズコープ奈良西事業所(奈良県奈良市),WORKERS NET RINGS(東京都渋谷区)のヒアリングを行った。これらも多様な支援資源との連携が見られたが,必ずしも方法論化されているわけではないものの,本研究が明らかにしようとしているフレームのもとで考えることが可能な実践であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成29年度において学内の役職を担う必要が生じ,そのことによって研究を進める物理的時間を確保することが困難になった。そのため,平成29年度中にぜひとも実施することが必要な調査を優先し,理論的研究についても学習指導要領改訂に至るまでの審議経過を辿り,コンピテンシーとパフォーマンスの関係を明らかにするにとどまっている。また,これらの事情から,研究成果を発表するまでに至っておらず,当初予定よりも遅れているといわざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定では,平成30年度において,①コンピテンシー概念の批判的検討を踏まえつつ,キャリア形成の目標・諸指標の暫定的設定,②支援現場における先進的な取り組みにおける成功事例を踏まえつつ,ブレンド型就労支援の理論的枠組み構築への着手を行うこととしていた。 ①については,平成29年度において十分に研究を進めることができなかったこともあり,平成30年度において,コンピテンシーとパフォーマンスとの関係についてさらに解明することを通じて,コンピテンシー概念の批判的検討を行うことを中心に実施し,キャリア形成の目標・諸指標の設定については,平成31年度に実施することとしたい。 ②については平成29年度中にブレンド型就労支援の理論的枠組み構築につながるAccount3の実践を見出すことができた。それゆえ,平成30年度においても,Account3に再度訪問し,追加的な参与観察を行い,Account3が方法論化した理論が実践のなかでどのように生かされているのかを中心に検討を行うこととしたい。また,国内の現場においては必ずしも理論化されず,その都度的ではあるものの,本研究が想定しているブレンド型就労支援のフレームのもとで理解可能な支援が行われていることを確認してきた。これらの実践がAccount3の方法論から捉えた場合にどのようにみることができるのかを確認していきたい。
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Causes of Carryover |
「現在までの達成度」において記載したように,学内業務の負担増によって研究のための物理的な時間を十分に確保できない状況が生じた。そのため,理論研究,調査研究ともに必要最小限のものにとどめ,平成31年度への実施を繰り越すかたちとなったため,次年度使用額が生じた。 それゆえ,平成31年度においては,理論研究を進めるための文献収集,および,平成30年度において最小限にとどめた国内調査の実施を行うことを予定し,これまでの遅れを取り戻す計画としている。
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