2018 Fiscal Year Research-status Report
地方創生に資する若手教員支援・育成システムの存立要件に関する米英調査研究
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17K04622
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山下 晃一 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (80324987)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 教育制度 / 教員養成 / 教員政策 / 地域と学校 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究においては、前年度の渡航調査によって得られた情報を基にしながら、米国と英国における現地調査を行った。米国では、学校改革と地域再生を関連づける政策が進む地域を訪問視察した後、ナショナルルイス大学、シカゴ大学、イリノイ州立大学をそれぞれ訪問して、各大学が取り組む教員レジデンシー制度、地域課題解決に向けた「社会的公正」指向型の教員養成プログラム、地域に根ざした教員養成の取り組みについてインタビュー調査と資料収集を行った。また、市内の高等学校1箇所および地域組織2箇所を訪問して、それぞれの見学およびインタビュー調査を実施した。英国では、ケンブリッジ市の小学校2校を訪問し、教員組織および教員の職能成長と地域との関係に関する聴取調査を行うと同時に、校内研修への参与観察を行った。また、リーズ大学に勤務する米国人研究者と面会し、同氏の研究テーマである教員の職能成長と地域との関係に関する英米比較調査について研究協議を行い、貴重な情報提供を受けた。他方、主な検討作業としては、他の共同研究における分析・検討結果からの相乗効果を得て、我が国の教員が有する事故役割認識および「教職の専門性」概念の双方において、日常の授業実践・学校経営と地域との関係がどう把握されているか、また、いかに位置づけることが可能か、という論点について検討・考察を試みた。そのなかで、地域や社会全体との関係性が意識されることによって自らの実践の社会的意義や正統性を確かめながら取り組む教員も現れて教育実践に深みや幅が出る一方、社会的諸課題を目の前にジレンマに陥る様子も見て取れる。やや単純化して述べれば、個人から地域社会的関係性へと視野が広がる米国・英国と、逆に社会的視野から対児童・生徒間関係という個人的側面へとあえて収束・閉塞する我が国という対照的状況が浮かぶ可能性もあり、今後、丁寧に検証作業を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度においても、研究遂行に不可欠な米国および英国における渡航調査を実施することができた。とりわけ昨年度の理論的側面に続いて、実践的側面として米国における教員養成の取り組みの実情を視察することは、本研究において念願とも言えることであり、対応して下さった先方からの充実した資料提供も相まって、研究を進展させる重要なきっかけになったと考えている。また、教員養成を行う大学教員だけでなく、実際に同プログラムを修了して公立小学校に勤務している教員も紹介してもらい、今後、実際の体験や所感などの情報提供を受けることが可能になった点も大きな進捗であった。他方、英国については、さらなる調査を行いたいが、全般的に年々調査の受け入れが厳しくなっているとも言われており、最終年度の調査に向けて対応策を講じる必要が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのところ、おおむね順調に進展しているため、今後においても当初の研究計画が円滑に進展できるよう努める。また、可能であれば、具体的に国際共著論文の作成・刊行へつながるような取り組みにも努める。
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Causes of Carryover |
書籍等が当初の想定よりも安価に入手できたため微少な額が残った。
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