2022 Fiscal Year Annual Research Report
The expertise of teachers in creating collaborative learning participation structures
Project/Area Number |
17K04673
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
金田 裕子 宮城教育大学, 大学院教育学研究科高度教職実践専攻, 准教授 (30367726)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 参加構造 / 会話フロア / リヴォイシング / 公共圏 / 沈黙 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、教室全体での対話やグループといった多様な参加形態で学ぶ子どもたちの関係を多元的、多層的に捉えて記述するとともに、教師が子ども同士の協働と対話を支援する働きを解明することである。 令和4年度は、教師が率先して子どもたちの「自分らしさ」を保障しリヴォイシングにより共有する過程と、子ども同士が相互に形成する「つながりあう知(connected knowing)」の関係をさらに理論的に探究した。中でも、学びが「つながりあう知」へ向かう前に見られる学び手の「沈黙」も参加の一形態としてとらえたShultz(2003,2009)の「聴くこと」の研究を参照し、子どもたちの参加を準備する教師の役割を捉える枠組みを検討した。さらに「聴くこと」の4つの次元に関連付けて国語の実践記録、算数の観察記録を分析した。 研究のまとめとして、これまでの分析事例をもとに協同的な学習の参加構造の基盤的な特徴とヴァリエーションを整理し、教室における公共圏の形成に関わる教師の役割を提示した。多元的・多層的な会話フロアは教師が起点となる二つの転換から形成されていた。第一に、教師が主要な会話フロアでの位置取りを「主要な話し手」から「聞き手」へと転換し、「沈黙」という参加形態をとる子どもたちの参加をも準備していた。第二に、多元的な会話フロア内においても教師が「聞き手」及び子ども同士の「媒介者」の位置に立ち、子ども同士の会話フロアの成立を支援することで、小さな会話フロアが安心できる、民主的な関係へと編みな直されていた。それにより、教師を主要な話し手とする一元的な会話フロアの優先性が解体し、子どもたちによる多元的な会話フロアを伴う多層的な参加構造の組織が可能となっていた。協同的な学習の成立には、教師による聴くことを基盤とした公共圏としての会話フロアの再構成の役割が必須であることが明らかになった。
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