2019 Fiscal Year Research-status Report
アウトカム評価を軸とするASEANの高等教育質保証と日中韓への影響の実証研究
Project/Area Number |
17K04708
|
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
早田 幸政 中央大学, 理工学部, 教授 (30360738)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 透 山口大学, 大学教育機構, 准教授 (20582951)
堀井 祐介 金沢大学, 高等教育開発・支援系, 教授 (30304041)
前田 早苗 千葉大学, 国際教養学部, 教授 (40360739)
望月 太郎 大阪大学, 文学研究科, 教授 (50239571)
島本 英樹 大阪大学, 全学教育推進機構, 准教授 (50299575)
工藤 潤 公益財団法人大学基準協会(大学評価研究所、高等教育のあり方研究会及び評価研究部), 大学評価研究所, 特任研究員 (70360740)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | ASEAN / 大学教育の質保証 / 内部質保証 / 認証評価 / アクレディテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「学習成果(ラーニング・アウトカム)」の測定・評価を軸に内部質保証、外部質保証を通じ、教育の質を高める方途を考究することを基本目的する。そこでは、国別そして各国を横断して質保証を展開しているASEANの大学教育質保証システムの調査を軸に据えている。今年度は、社会的情勢が不透明で、調査の実を挙げることが困難であるカンボジアに代え、当初計画と整合する範囲で前年度調査を補完すべく、急速な経済発展に呼応して高等教育の規模が大きく拡大し公共領域や経済分野の人材需要が、ASEANの他の国々より強固なベトナムを対象に、次のような内容の調査を行った。 まず、「ホチミン・ベトナム高等教育質保証機構(VNU-HCM)」の調査では、当該機構固有の質保証基準と国家基準、ASEANの汎用基準(AUN基準)との関係性、質保証における内部質保証とアウトカム評価の位置づけについて聴き取り調査を行い、新たな知識を得ることが出来た。同じく、訪問調査を行ったフルブライト公共政策大学院に関しては、内部質保証システムにおける当該プログラムとその開設主体であるフルブライト大学との関係性、最近アクレディットを受けたNASPAAの評価基準充足のために講じた措置とその際に実施したコンピテンシー・ベースのラーニング・アウトカム・アセスメントの手法について斬新な知見を得ることが出来た。なお関連して、上記NASPAAのアクレディテーション・システムの書面調査は、今期も継続して行った。 このほか、我が国認証評価の枠組みの中での大学教育質保証の有効性に係る調査を、大学基準協会がweb上にアップした情報を手掛かりに行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、学生の「ラーニング・アウトカム」の実際の達成状況の測定・評価を中軸に大学教育の質保証を行う仕組みについて、そうした試みを先進的に展開しているASEANの現況把握を中心に据えて行ってきた。 すでに本研究の枠組みの中で、ASEAN各国のうちのタイ、マレーシア、インドネシアの実地調査は完了しており、前年度、部分的に実地調査を行ったベトナムについて、今回、追加的な訪問調査を実施した。また、ASEAN横断的な高等教育質保証システムについては、対象国の訪問調査を行う中で所要の調査を行ってきたほか、2度にわたり学術論文を介してその成果報告を行うなど、さらに研究の精度を深めている(なお、マレーシアの高等教育質保証システムについては、今年度、上記実地調査の結果を踏まえ、その調査結果を学術誌に掲載した)。このほか、本年度は、アクレディテーションの基本軸を押さえるため、引き続き公共政策大学院の外部質保証を掌る米国NASPAAの活動の実相把握を書面調査を通じて行った。併せて、我が国認証評価制度の実態把握も書面調査の方式で行った。 ところで、本年実施予定であったカンボジアを対象とした調査は、同国の社会情勢等を考慮しその実施を断念したが、改めて次年度実施を検討したい。 本年度は、べトナム訪問調査のほか、上記書面調査でも、ASEAN横断的な質保証の仕組みの更なる調査やNASPAAのアクレディテーションの実態把握などにおいて、予想を上回る研究の進捗を見た。さらに特筆すべきは、今回のベトナム訪問調査を機に、「ホチミン・ベトナム高等教育質保証機構(VNU-HCM)」と我が国「大学基準協会」が組織間連携に係る国際協定を締結したことであり、これは本研究における想定を超えた成果であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
本調査においては、これまで見たようにASEAN横断的な質保証の枠組みの詳細な考察を行ってきたほか、同域における高等教育先進国であるタイ、マレーシア、インドネシア及びベトナムの訪問調査を行い、その実態把握を行ってきた。米国アクレディテーション・システムや我が国認証評価の検討も書面調査を通じてさらに進めつつある。なお、高等教育が発展途上にある国の教育質保証の実情の観察を目的に、訪問調査対象国として選んだカンボジアの現地訪問は本年度未実施であったので、同調査の次年度完了を目指したい。 ところで、中・韓個別の大学教育質保証の仕組みついては、これまで書面調査を通じ行ってきた一方で、日中韓を横断する質保証枠組み構築の可能性を模索していく上で、中国を対象とした訪問調査、現地調査が不可欠であると考える。次年度は、本研究の目的をより十全なものとするため、中国への実地調査を敢行したい。 しかしながら、現在、地球規模でコロナウィルス感染の脅威にさらされ、海外渡航を経ての訪問調査の実現が極めて厳しい状況にある。そして、この状況が次年度に持ち越されることが危惧されている。こうした状況を踏まえ、本研究では、あくまで、上記対象国への訪問調査の実施を模索しつつも、仮に、その実施が困難となることを考慮に入れ、上記課題の解明を試みた過去の文献等に目を通しその検討を行うほか、web検索を含むオンライン上のツール等を活用しながらそれらの考察を鋭意行っていきたい。
|
Causes of Carryover |
ASEAN調査の一環として、高等教育が発展途上の段階にある国の調査を計画する中で、 本年度にカンボジアの調査を行うことを計画していた。しかしながら、同国の社会情勢に懸念が生じたため、調査対象を急きょ、ベトナムに変更せざるを得なかった。また、日中韓の3か国の高等教育連携の調査のため、中国訪問を年度末に計画していたが、これも、コロナウィルス禍の影響で断念せざるを得なかった。このように当初計画との関係で未達成な部分が生じたため、100ページ程度の書面形式での成果報告書の作成も見送ることとなった。 次年度は、カンボジア並びに中国の高等教育質保証に係る訪問調査を実施したい。また、諸情勢を鑑みてその実施が困難である場合、代替的に米国のアクレディテーションの先端的状況の把握も計画したい。その上で、充実した成果報告書を当初予定通り、紙媒体方式で刊行することとしたい。
|
Research Products
(4 results)