2020 Fiscal Year Research-status Report
Ethnographic Study of Guidance Practice for Social and Emotional Skill Formation in Low-Ranked High School
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17K04709
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
古賀 正義 中央大学, 文学部, 教授 (90178244)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 社会情動的スキル / スクールソーシャルワーカー / 文化資本 / 社会関係資本 / 自立活動 / 青少年育成指導者研修会 / 内閉化した関係性 / 課題集中高校 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、学力不振や不適応行動を呈する生徒たちが集まる「課題集中高校」において、将来の進路形成や社会参加を可能にする「社会情動的スキル」形成の活動やその援助の実践がどのように取り組まれ、その効果が当事者(生徒や教師、保護者など)にいかに意識されているのかを、各種の現場調査(東京、高知など)によりながら明らかにしようと試みた。特に本年度は、コロナ禍によって、各種調査を進めることがきわめて難しかったため、研究費の延長手続きによって、できうる調査を柔軟に進めることに方向を転換して進めていった。 対象校の生徒さらには類似の特徴を有する若者の実態把握については資料収集およびその整理作業をより緻密に進めた。特に、高知での同一の生徒に対する3年間のパネル調査の結果およびインタビュー調査(教師やソーシャルワーカーも含む)の成果を再度整理・分析し、学会のオンライン研究会や内閣府の調査報告書などにもその結果の一部を公表し活用した。 この間高校現場では、オンライン利用が拡大し、家庭の文化資本の不足や社会関係資本の欠落などから生活習慣形成の困難や仲間関係の歪みが一層問題視された。コミュニケーションの阻害を解消するための「自立活動」の実践も随時展開された。同時期、内閣府の若者の社会関係の全国調査にも協力し、全国的に見ても地域の先輩やネット仲間など広い他者との関係性が学校外に広がることが難しく、内閉化した関係性への依存が一層顕著で、援助の情報提供や相談が難しくなっていることが確認できた。 そこで特に、実施済みアンケート調査の再分析や広く若者調査からの課題生徒・若者層の抽出分析などに労力を割いた。最終報告に至る予定だったが、調査成果を雑誌論文や研究会、青少年育成指導者向け研修会等で広く公表するとともに、さらに1年間調査研究を延長する方向で作業を改めて進めることにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究4年目として、初年度からの基礎研究を踏まえつつ、対象生徒への継続的なアンケート調査の分析・整理、および生徒や教師、スクールソーシャルワーカー等へのインタビューによるフォロー分析・整理にも時間を割いた。 同時に、より広い対象の若者層から、課題生徒の実態を社会学的に把握する試みにも挑んだ。具体的には、生徒の自己意識や進路意識、対人関係などについて、前年の台北調査の知見をふまえつつ、内閣府の全国若者調査に協力し、「社会情動的スキル」にかかわる学校現場の課題をこれまでと異なる広い視点から調査者自身も理解することができ、有意義だった。 さらに、低ランクの課題集中校と連絡を取り、随時現状を聞き取りすることによって、地域社会のネットワークの弱さや家族関係の内閉的な強さなどを背景としたスキル形成の問題や具体的な指導実践のあり方にも理解を深めた。特に、地方地域での3年間の調査の分析を、個に応じた社会参加の課題改善に取り組む方法論を模索する現場の実践的な動きと重ねて理解した。実際「社会性発達」の実態調査を教育委員会などが継続的に実施しており、このデータも本調査の分析と関連付けて検討することが可能になった。分析に学校の影響だけでなく、地域の特性や対人ネットワークについても取り込む分析が可能となる見込みである。 これら継続研究によって、残された予算を活用するデータ収集・分析の課題がより明瞭になってきたので、今後「社会情動的スキル学習」の実態とその波及効果を分析し公表する方法を検討し、具体的な最終段階の調査・分析へと進みたい。そのための調査対象への働きかけも順次行っており、雑誌論文や研究会、青少年育成指導者向け研修会等での公表を含めて、最終年度にはよりよい成果が見込めるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
課題集中校の「社会情動的スキル学習」のどの側面で当事者の評価が高いのか、3年間のパネル調査の結果などから分析することを進めている。加えて、調査協力した内閣府全国若者調査では、困難な若者に地域社会の窓口対応や相談機関など専門家の支援が利用されるようになる反面、家庭や仲間を媒介とした身近な社会関係の資源も必要とされており、学校を介した対人関係のネットワークがスキル形成上一層重要と意識されていた。 卒業後にも学校時代に困難を感じた経験が不安を生み出しリカバリーが難しくなる日本の若者の「社会情動的スキル」の歪みについて一層着目した研究が必要である。調査者による論考(「困難経験・問題体験をともに抱えて生きる若者の社会生活の特質と支援の受け止め方」中央大学『教育学論集』2021)でも、顕著に学校生活の負の体験の後遺症がその後の居場所や人間関係のなじめなさあるいは空気の読めなさに接続していた。しかも、こうした困難な若者の改善の契機は、学校の友人・家族の簡略な助言や時間の経過による気持ちの切り替えであるとされており、それがあって初めて、専門家の支援や相談対応がより有効に感じられるという。 この点で、地域の人材を配置し異年齢コミュニケーションをとる実践や職場体験による場になじむ自己肯定の活動など、学校を介した社会参加の機会を拡大し構築する実践がより一層重要である。学校自体で行うスキル学習は、広範な参加への導きとなるべきであり、「ゆるやかな一歩」を構築する準備的活動を行う必要がある。 そこで、再延長後の次年度でさらに、学校での体験・スキル学習と学校外でのスキルを伴う経験との接続を掘り下げる予定である。日台国際比較もこの点の理解に役立つといえ、インタビューや観察も並行して試みるつもりである。
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Causes of Carryover |
本研究は、延長期間を加えて2020年度に完結する予定であったが、コロナ禍が深刻であり、調査活動や発表活動などに深刻な影響があり、変更となった。そこで、早々に再延長の手続きを行い、調査にかかわる直接的な経費や公表・報告に伴う雑費等の経費などを取り置くことを行った。これは、現有のデータの整理作業だけではなく、さらなる新規の活動を想定したためである。 これに伴い、PCや周辺機器のリプレイス、あるいは資料の図書の収集など基礎的なインフラの充実をして、次年度に備える体制をとった。ここに、残額が生じる余地が生まれたが、最終年を想定した予算配分になっている。なお、インタビューの文字お越しやデータの再分析経費なども残額においてかなり行えるようにしたつもりである。 コロナ禍の終息にメドが立っていないため、予算の執行計画がたびたび変更されている。非常時の事態であり、やむおえないことであるが、十分に有効な予算活用を心がけていく予定である。
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Research Products
(7 results)