2019 Fiscal Year Annual Research Report
Sociological Research on Employment Support Policy and Practice Programmed in Revitalization of Local Industry and Community
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17K04711
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
筒井 美紀 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (70388023)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 地域内蔵アプローチ / 人的資本アプローチ / 社会的投資 / 社会関係資本 / 課題集中校 / 学校の資源的限界 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度の今年度は、経験的調査においては、引き続き、大阪市浪速区・西成区でのフィールドワークを進めた。この取り組みの中心にある大阪地域職業訓練機構(Aダッシュワーク創造館)は、近隣の高校で教員と協働しながら進路・職業相談を展開してきた。本研究はこのプロセスを、協働の不在→開始→展開→根底的課題の出現、として整理し、地場産業と地域社会の活性化に内蔵化された就労支援が、決して一方向的な「成功への道筋」を辿らないことを描出し、学校の資源的限界を克服すべく取るべき社会政策・教育政策(各スケールでの制度的再調整)を指摘した。 上記の経験的調査は、理論的には、労働供給サイド偏重の社会投資戦略(ヨーロッパがそうである)の限界を明らかにしたものだと言える。学校の機能というと、人は教育機能(人的資本の蓄積)をまず思い浮かべがちだが、学校は地域社会・労働市場との「つながり」(社会関係資本)を創る機能も担ってきた。教育機会を平等にしても「マシュー効果」は消えないし、ハイテク社会でも低賃金・低スキルに留め置かれる人々が依然必要とされる。それゆえ本研究は、「つながり」を創る機能を重視する「地域内蔵アプローチ」を、必要不可欠な政策として、「人的資本アプローチ」との対比で/相互補完的なものとして、提示する。 さらに本研究は、ヨーロッパの社会的投資戦略が、なぜ労働供給サイド偏重なのかに関して仮説を提示した。公的セクターでの雇用創出スキームというかつての失業対策の一手段が、失敗経験として認識されていることも遠因としてあるのではないか。このパースペクティブは、本研究が着眼してきたタイプの雇用創出を等閑視しがちだ。しかし、これらを視野に入れることで、労働需要サイドにもっとはたらきかける社会的投資戦略を構想できるだろう。これが本研究の含意である。
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