2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K04790
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
柴 一実 広島大学, 教育学研究科, 名誉教授 (60145175)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 長野県教育委員会 / 信濃教育会 / 長野県カリキュラム試案 / 理解の目標 / 小学理科学習帳 / 討議法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,対日占領期において文部省とGHQ/SCAP/CIEによって実施された中央での理科教育改革が地方においてどのように展開されたのかを明らかにすることである。一般に昭和20年代には,都道府県教育委員会や地域の学校において,さまざまな特色ある理科カリキュラムが作成,実践されたと言われている。それではこれらの理科カリキュラムは何を基準に作成されたのであろうか。小学校理科教科書検定基準が設定されたのは,『学習指導要領・理科編(試案)』が発行された1947年5月ではなく,文部省告示第12号が発布された1949年2月のことである。その後,同検定基準が改められ,文部省告示第88号が発布されたのは,『小学校学習指導要領・理科編(試案)』が発行された8ヶ月後の1952年10月である。この時初めて,教科用図書検定基準は小学校理科学習指導要領に基づくと規定された。それでは,昭和27年以前に地方において作成,実践された理科カリキュラムは何に基づいて編集されていたのであろうか。そこで本年度は戦後理科教育改革の地方への浸透と展開の過程を研究する初年度として,長野県教育委員会を事例として取り上げ,同県における戦後小学校理科教育改革の実態を明らかにした。本年度の研究成果として,長野県の場合,戦前から先進的に活動を展開していた信濃教育会の協力を得て,同県教育委員会は小学校理科カリキュラムを作成したのである。長野県小学校理科カリキュラムでは,内容基準である「理解の目標」の作成に当たって,理科研究中央委員会による「理解の目標」(1947)の基本理念や目標構造を踏襲しつつ,県内の地質・地形や養蚕業など地域の特性を組み込んだ内容を新たに付け加えていた。カリキュラム作成と並行して編纂された『小学理科学習帳』(1949)でも長野県独自の内容を盛り込むなど,長野県特有の取り組みを解明することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年は研究の初年度であり,主に一次資料の発掘に重点をおいていた。本年度,口頭発表したり,論文発表した長野県の戦後小学校科理科カリキュラムに関する研究は以前,現地調査を行い,収集していた資料に基づいて実施したものである。この研究は今後,本研究のテーマである,「戦後理科教育改革の地方での展開過程に関する研究」を進める際の道標になると認識している。また,初年度の研究計画として取り上げた一次資料の発掘については,貴重な研究資料を発見することができ,1年次の研究計画は概ね順調に進展していると見做している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在,2年目に向けて,収集した資料の分析検討を進める一方,新たな一次資料の発掘を目指したいと思っている。どの範囲まで地方の小学校理科カリキュラムを収集することができるかは判断つきかねるが,可能な限りの収集に努めたいと思っている。
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Causes of Carryover |
当初計画していたよりも,多少物品費の支出が少なかった。本年度予算計画では物品費を計上していないので,それに関する支出を本年度予算分から充てたいと思っている。また,旅費等についてはほぼ計画通り,予算執行が進んでいると思われる。
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