2021 Fiscal Year Research-status Report
地域課題の解決に焦点を当てた市民性育成教育実践の比較研究
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17K04804
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
吉村 功太郎 宮崎大学, 大学院教育学研究科, 教授 (00270265)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 市民性教育 / シティズンシップ教育 / 社会科教育 / 総合的な学習の時間 / キャリア教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
地域社会の課題解決に焦点を当てた市民性育成を目指した教育に関する実践について、昨年度に引き続き、収集済みのものについての分析研究を行うとともに、新型コロナ感染症の状況下においても研究を進めるための基礎資料として、文献や報道資料、ネット上に挙げられている報告書などで本研究の対象となり得る教育実践例の収集を行った。 ただ、それらの実践についての報告書などまとまった形での資料は少なく、一定程度の分析に耐えうるものが極端に少ないのが研究上の課題となっている。 このような制限のある状況において、収集した資料を含め、前年度までと同様、分析によって育成を目指す資質・能力の内容ならびにその育成原理がある程度抽出できるものについての分析を行った。その結果,前年度までの成果である以下の2点をある程度裏付けるような同様の傾向が見られることを明らかにした。 第1は、地域社会の問題解決を組み込んだ市民性教育を開発・実践している教育プログラムの特質を、より詳細に分析できたことで、その教育目的と育成方略のタイプを整理できたことである。教育目的の面からは、①地域貢献に資することができる能力や態度を持つ者といったような実質的な姿を念頭に置いた人材養成と、②知識・技能を活用しながら他者と共同で問題解決を行うことができるような汎用性の高い能力を持つ者といった外形的な姿を念頭に置いた人材養成とに大きく二分され、それらの目的に準じる形でそれらの資質・能力を育成する方略を設定していることが明らかになった。 第2は、分析対象とする教育プログラムの設定理由やねらいに関する文献調査やインタビュー調査によって、そのような教育プログラムを設定した社会的背景・地域的背景を分析し、仮説的にではあるがその特質を論理的に説明する事ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の進捗は全体としては計画よりも遅れていると言わざるを得ない。 研究領域別に捉えるならば、既に収集済みの資料を基にした分析研究、ならびに新たな実践を分析研究の対象とするために基盤づくりである調査研究についてはある程度進んだと言えるが、資料の分析のみでは研究成果として不十分な事例についての追加的な現地調査(実践の観察、聞き取り調査など)が難しい状況が続き、分析の質的なレベルに課題が残っている。また、これまでも課題となっていた新たな調査対象(実践校や教育プログラム)の開拓・調査についても、新型コロナ感染症の影響で予定した調査を行うことが難しくなり、文献や報告書、報道資料などでの収集のとどまり、教育プログラムの比較については十分な考察ができているとは言えない状況となっている。また、それら教育プログラムの背景となる社会的文脈や教育目標等の項目をマッピングによって構造化することについては、現地における聞き取り調査や実践の実地調査などが欠ける京教となっており、分析のための資料収集が不十分な状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
ほぼ計画通りに進んでいる分析研究については、収集済みの既存の資料を分析対象としており、しかもそれらの資料は単年度ではなく少なくとも4年以上の継続的な収集によるものであるので、数年間の実践の比較分析による教育プログラムの特質を捉えやすかったということが大きく寄与している。継続的な資料収集の重要性を改めて認識できる結果となった。ただ、実践を行っている学校側も、コロナ状況下で当初の実践計画を縮小・変更せざるを得ないという事情を抱えており、数年間の比較分析が難しくなっている実態がある。 一方、新たに収集した新たな実践に関する研究については、分析対象となり得る可能性のあるものについてのリストは作成済みであるが、それらの実践についての文献資料の収集は、実践そのものが研究紀要や教育論文などの形でまとめられていなかったりするなどの課題がこれまでにも明らかになっていた。このような状況に対し、新型コロナウイルス感染症の影響で、実地調査の機会となる実践の研究発表や、地域での教育実践そのものが難しい状況であったため、研究をまとめるために分析に耐えうるまでのレベルの資料を集めるまでには至らなかった。 また、延長が認められた今期についても新型コロナウイルス感染症の件で教育プログラムの実践者である学校教員への聞き取り調査そのものが難しい状況が続いており、研究6年目においても実地的な調査による追加資料の収集が課題となっているのが現状である。 既に研究期間を延長している状況であるので、現在収集している資料や、未収集の既存の関係資料の探索と収集を行うことで分析可能な状況をつくり、無理のない可能な範囲で成果をまとめる方向で進めることとする。
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Causes of Carryover |
結果的にではあるが、新型コロナウイルス感染症の状況がこれまでの分析結果を裏付けるための追加調査や、教育プログラムの類型化を行うための新たな教育プログラムの調査の進展を阻んでいるといわざるを得ない。 特に現地を訪問するなどしての実践に関する実地調査や、それを補完する形での聞き取り調査が進んでいないことが、それらに必要であった経費の執行を遅らせることになった。 研究六年目である今年度においては、本来であれば調査を加速的に行うことで研究の進捗を図りたいところであるが、新型コロナウイルス感染症の状況がそれを難しくしているのが実際である。基本的には文献の分析を進めることで、今年度中に可能な範囲での研究成果をまとめることをめざす。
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Research Products
(1 results)