2018 Fiscal Year Research-status Report
改良学校国文法を用いた授業実践による中学生の論理的思考力と伝え合う力の涵養
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17K04829
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
佐藤 勝之 武庫川女子大学, 文学部, 教授 (80215772)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村山 太郎 武庫川女子大学短期大学部, 日本語文化学科, 講師 (20743850)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 文節 / 学校国文法 / 入れ子構造 / 生成文法 / 文の組み立て / 文章の組み立て / 機能言語学 / 結束関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、中学校国語科教科書の言語事項、いわゆる学校国文法の諸問題について、各教科書を参照しながら具体的に整理・検討した。これにより、「音と意味の(不自然でない最小の)まとまり」であるはずの「文節」を元にした「文の組み立て」説(橋本文法)では、文の「意味のまとまり」が捉えられないことを改めて確認した。 例えば「とても|高い|ビルが|建つらしいね」(三省堂『現代の国語1』)について、文節の区切り(|)は、確かに終助詞(間投助詞)「ね」「さ」「よ」を文節末に置いて〈音のまとまり〉を作ると言えるが、〈意味のまとまり〉は[(あの/一郎君、)[(どうも)[とても高いビルが建つ]らしい]ね]という(チョムスキーの生成文法の応用である)〈入れ子構造〉によって、初めてきちんと捉えられるのであり、文節「建つらしいね」は単位として意味を成さないことが分かる。そして、この入れ子構造の認識があってようやく、中学生の作文でしばしば生じる「主語-述語のねじれ」(「もちろん一郎は次郎が立派だと思うが...」の「思う」主体は「一郎」か書き手か?)をきちんと解消することが可能になるのである。さらに、教科書の単元となっている複数の説明的文章について、(ハリデーの選択体系機能言語学の考え方を援用しながら)「文章の組み立て」を、「文の組み立て」の種類と、キーワードのつながり(結束関係)によって捉える試みを行った。 次年度は、こうした諸々の検討を、具体的なシラバスおよび授業案としてまとめ、授業実践とその成果を報告できるようにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で記したように、当初の計画に関しておおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」で記した、これまでの教科書の〈言語事項〉の整理に基づく学校国文法の問題点を指摘しつつ、授業実践としては、従来の用語法や考え方を上手に利用して、学習者において〈ことば〉を反省的に捉える意識を養い、さらに、これを文章の読解に役立てられるようなシラバスおよび授業案を提案していきたい。
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Causes of Carryover |
研究会を研究代表者および研究分担者の在籍する大学で専ら行ったため、残額が生じている。次年度は外部で研究発表を行う予定である。
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