2019 Fiscal Year Annual Research Report
Research in the view point of historical educational thoughts on moral lessons by multifaceted and diverse ways of thinking and moral lessons by discussing
Project/Area Number |
17K04874
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
上地 完治 琉球大学, 教育学部, 教授 (50304374)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 佳世 横浜国立大学, 教育学部, 准教授 (50454153)
小林 万里子 岡山大学, 教育学研究科, 准教授 (90325134)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 森昭 / 人間形成 / 教育人間学 / 勝田守一 / 自主的判断 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究最終年度となる今年度は、森昭の教育哲学研究と、勝田守一の教育学研究から彼らの道徳教育論を読み解くことで、「考える道徳」「議論する道徳」に関する思想的な示唆が得られた。 人間形成と道徳教育を重ねて説明する森によれば、人間形成は決して中学校で終わるわけではないので、学校における道徳教育は、小学校から高等学校まで連続して、人間とは何かといった探究とともに進められるような「人間の在り方や生き方についての自覚」を深めることに収斂されるべきだという。そして、森のいう人間形成は、成長、形成、伝達、覚醒の4つを含む立体的な出来事として捉えられていて、自然的生命の「成長」と人格への「覚醒」が人間形成の縦軸をなし、社会による「形成」と文化の「伝達」が横軸をなすという。また、森は、本質主義的な道徳観や道徳の価値の絶対性を批判し、価値の相対性を強調するからこそ、人間はその都度の決断と行為に「主体的道徳的責任」が課されるのだとした。さらに興味深いことに、森は道徳的な意識である良心を知性と結びつけ、自らの行動の社会的意味やその帰結を見極める「完全知」として捉えていて、知性による認識を欠いた良心はたんなる主観であるとした。 勝田の道徳教育論の特徴は、一面的な理解に留まらず道徳教育の矛盾した性質をきちんと捉えている点にある。勝田は子どもの自主的判断を道徳の基底に据えるが、しかし、教育には子どもを既存の社会へと適応させようとする働きが拭い難く含まれていることも認識している。また、人権や平和といった進歩的な道徳を支持しつつも、そうした価値観もある種のイデオロギーへと転化する危険性があることを看過しない。子どもの自主性を育てることが学校教育の責任であると明言しながら、しかし、学校教育の統制的作用に決して目を閉ざすわけではない。こうした両面性が捉えられた上で、道徳における自主的判断の重要性が語られるのである。
|
Research Products
(8 results)