2017 Fiscal Year Research-status Report
日本伝統鍼灸におけるコアカリキュラム作成のための調査研究
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17K04892
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Research Institution | Meiji University of Integrative Medicine |
Principal Investigator |
和辻 直 明治国際医療大学, 鍼灸学部, 教授 (60220969)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠原 昭二 九州看護福祉大学, 看護福祉学部, 教授 (50141510)
斉藤 宗則 明治国際医療大学, 鍼灸学部, 特任准教授 (90399080)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 鍼灸教育 / コアカリキュラム / 東洋医学概論 / 日本の伝統医学 / 教育項目の重要度 / 調査票 / 中医学(中国の伝統医学) / 日本の伝統鍼灸 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、鍼灸教育ではコアカリキュラムの必要性が高まっており、日本の伝統鍼灸の独自性を含めた東洋医学概論の標準的な教育内容の策定が課題である必要とされている。そこで、東洋医学概論の教育項目における重要度を調査した。 対象は本調査に同意した者で、鍼灸師養成学校・大学にて東洋医学概論を担当される教育者98名、日本伝統鍼灸学会の賛助会員16名とした。調査票は、東洋医学概論の科目における国家試験出題基準と教科書の『新版 東洋医学概論』を参考に教育項目を74の教育項目にを設けて、各項目の重要度を4段階(とても高い、高い、普通、低い)で尋ねた。また調査手段は郵送とメールで実施した。 その結果、鍼灸師養成学校・大学からの返信は70名、伝統鍼灸学会の賛助会員11名であった。鍼灸師養成学校・大学の結果では教育項目74項目の重要度で「とても高い」を選んだ者に注目した。①東洋医学の基礎6項目中に、「とても高い」を選んだ項目では五行論56名、陰陽論61名が多かった。②気血津液と精・神6項目では気61名、血60名、津液津58名の順となり、③臓腑経絡論14項目では六臓64名が最も多く、臓象学説53名と六腑46名となっていた。④病因と病機2項目では病因49名、⑤四診項目26項目では舌診52名で多く、脈状診47名、問診の疼痛と飲食・二便46名であった。⑥証立て12項目では臓腑弁証59名、気血津液弁証57名、八綱弁証50名であった。⑦治療法8目項では「とても高い」を選んだ者が少なかった。 本調査の結果より、四診項目の重要度で舌診、脈状診、問診が選ばれたことから、中医学の影響によるものと考えられた。また治療法では本科目の特質や他の科目との連携などの理由によって重要度が低かったと推察された。今後、本調査の結果を詳細に検討し、日本伝統鍼灸の特徴を含む東洋医学概論の標準内容を策定していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究は計画通りに実施した。当初、日本の伝統鍼灸に関する学会・研究会への調査については、日本伝統鍼灸学会の賛助会員16団体へのアンケート調査を計画していた。しかし対象の母数が多く、調査時期を勘案して、日本の鍼灸師養成施設(大学と専門学校)への調査を先に先行して実施した。この調査の対象は当初、専門学校90校、大学12校の予定であったが、専門学校での統廃合や廃校があり、専門学校85校、大学12校に実施した。その結果、70校から返答があったを得た(回収率71%)。次ぎに日本伝統鍼灸学会の賛助会員16団体への調査を実施した結果、11校から返答があったを得た(回収率69%)。上記の調査の内容は既にデータ入力を終えて、現在のところは解析中である。但し、当初の研究計画で、可能ならば実施する予定であった盲学校への調査は、調査票の作成における遅延もあって実施しなかった。 平成29年度の進捗状況は順調であると言える。調査対象の順番を変更したが、調査を終えて、鍼灸師養成施設の調査、伝統鍼灸学会の関連した団体の調査の回収率はいずれも約7割で、回収率も概ね高かった。 成果の公表は、2018年11月に開催される第46回日本伝統鍼灸学会において発表を予定している。また順調に解析が進めば、2019年6月に開催される第68回全日本鍼灸学会に発表を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に調査で集計した内容を伝統医学領域における鍼灸教育の必要項目として整理する。教科書の項目における重要度評価の集計結果を基に、重要度の意味づけを検討する。特に不要の重要度の低い項目は慎重に扱い、その理由や根拠を検討する。また現在の教科書に不足または欠落している内容は、補足するかどうかを論議し、補足する場合は理由を明記して、教科書に反映できるようにする。 次ぎにコアカリキュラムを作成するにあたり、前述した鍼灸教育の必要項目を確認する。なお本研究の基本方針には、「コア・カリキュラムを作成するための前段階のとなる資料を作成すること」がある。この基本方針は①医学教育のコアカリキュラムを参考に伝統医学として置き換えを検討する、②鍼灸師の業務範囲内における内容を検討する、③世界保健機関(WHO)の伝統医学観(国の文化に根付いた理論や経験的実践、健康を保持し、心身の病気を予防・診断・治療すること)を有するかを検討して、必要項目を評価する。これらにより、コアカリキュラムを作成するための前段階のとなる資料を作成する。 最後に、作成されたコアカリキュラムを現行に使用しているの国家試験基準や教科書と比較検討する。可能ならば日本の伝統鍼灸学(基礎理論・疾病観・診断・治療・手技)の標準化(案)を作成する。
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Causes of Carryover |
本調査では、鍼灸師養成施設(大学と専門学校)への調査と日本伝統鍼灸学会の賛助会員16団体の調査を行う予定であった。また可能ならば盲学校への調査を実施する予定であった。鍼灸師養成施設は専門学校での統廃合や廃校があり、専門学校85校、大学12校を対象に実施した。調査票の作成における遅延もあって、盲学校への調査の実施は返送時期を考えて断念した。このため、当初の研究計画よりも、調査対象が減ったために郵送費や消耗費などの経費が少なくなった。 また調査データの入力などの支援費については、研究協力者の都合により人件費を受け取れず、交通費のみの支給となった。このため、当初の金額よりも支出が抑えられていた。 前年度、研究分担者との正式な研究会合は1回のみで、今年度は本調査研究の内容を充実させるために、調査結果をしっかりと検討できるように研究会合の回数を2~3回に増やす予定である。
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