2019 Fiscal Year Research-status Report
「幼児が法則性に気付く体験」に繋がるような環境構成を立案できる保育者の養成の研究
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17K04901
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Research Institution | Kobe Tokiwa University |
Principal Investigator |
大森 雅人 神戸常盤大学, 教育学部こども教育学科, 教授 (00194308)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 保育・幼児教育 / 規則性 / 法則性 / 一般性 / 科学教育 / 保育者養成 / 領域環境 / 領域自然 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「幼児が法則性や一般性に自ら気付く体験」に繋がる環境を構成できる力を持つ保育者を養成するための、教育の在り方の提案を目的としている。令和元年度は、本研究が目的とする力の育成のための教育におけるミニマムスタンダードを設定するにあたり、研究計画にある3つの検討事項のうち、「教育内容」「保育者に求められる力」に関連する研究を実施した。以下に、令和元年度に取り組んだ内容と得られた成果について、その概要を記述する。 ①本研究の根幹である、幼児期の教育で扱う「規則性・法則性」について再検討した。具体的には1947年の(試案)保育要領から、現行の幼稚園教育要領解説までを対象として考察した。その結果、記述が消えた時期があったが、1960年代から現在に至るまで大切なものとして位置づけられていた。捉え方は、気付く過程が大切であること、科学的な正確さや厳密さは求めず幼児が自らの力で発見できるものでよいこと、見出そうとする態度の育成を重視であることが分かった。 ②教育内容を導くために、過去からの指導書・要領解説に示された規則性・法則性の具体例を整理・分類した上で、教育内容として取り入れることができると考える例を抽出、カテゴリー化した。物的環境に関わるカテゴリーでは「物と力」「物の性質」、自然環境に関わるカテゴリーでは「生物の特徴」「天気」となった。 ③本研究の教育方法に示唆を与えると考えられる、米国の「Building Structures with Young Children Trainer's Guide」に関する検討を行った。その結果、保育者自らがワークショップに参加して実践的な探究活動を行うことで、科学の概念、探究の過程、幼児の探究活動に対する支援のあり方に対する理解を深めように構成されていることが分かった。この結果は、保育者に求められる力を導くにあたっての参考となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の推進方策を策定した段階で、「教育内容」の検討に関して、当初の想定に無かった新たな知見が得られることを想定し、その際は、本研究の目的に沿ったより有効性の高い「ミニマムスタンダード」となることを優先する方針を立てていた。そうした方針に沿って本年度の研究を進めた結果として、「教育内容」に関しては研究実績の概要に記述したとおりの研究成果を得ることが出来た。さらに、取組の着手が遅れていた「保育者に求められる力」についても、今年度は検討を実施して一定の成果を得ることが出来た。 ここまでの段階を、当初の計画と比較するなら、進捗状況としては遅れている。しかし、本研究の取り組みが進行する過程で、戦後の我が国における保育実践で蓄えられてきた知見を活かすことで、よりよい研究成果が得られることが明らかになっており、さらには海外での研究においても当初の想定以上に本研究の参考となる新たな知見を見いだすことができている。 以上のように、当初の予定通りには進んでいないが、計画当初に無かった新たな検討対象を加えたことがより高い研究成果につながると考えられるので「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の当初計画は、以下の①から⑦を想定していた。 ①本研究が目指す力を育成する教育における「教育内容」を明らかにする。 ②優れた実践が行われた保育現場において、保育者を対象に、「保育者に必要な力」とは何か、それはどのような過程で育成されたのかを聞き取り調査によって明らかにする。 ③申請者らが取り組んできた研究の成果を精査して、「学習者の特性と教育方法」の関係をより詳しく検討する。 ④上記の①から③までの検討結果を総合して「ミニマムスタンダード」を設定する。 ⑤設定した「ミニマムスタンダード」を前提として、教育方法の検討を行う。 ⑥開発した教育方法で実践を行い効果の確認を行う。結果に応じて、追加の研究等も実施して教育方法のさらなる改善を行う。 ⑦すべての結果をまとめて、教育の在り方として提案する。 現段階では、①から④の検討を行っている。そのうち特に①の「教育内容」に関しては、当初の想定に無かった新たな知見が多く得られており、現時点でも研究が進行している。②の保育現場での聞き取り調査に関しては、コロナウィルス感染症の流行などにより取り組みが困難な状況にある。しかし、この部分に関して、海外の文献で参考となるものが見つかり、その分析を進めている。③の教育方法の検討に関して、遠隔教育(オンラインでの教育)に新たな可能性が見つかりつつある。以上の現状を踏まえ、当初計画からの一部変更を次の通りに行う。すなわち、②における保育現場での聞き取り調査を断念して、海外文献を中心とした検討にする。③の教育方法の検討対象にオンラインでの教育方法を加える。 今後は、変更した方針で「ミニマムスタンダード」の設定と、その教育方法の検討を実施する。なお、コロナウィルス感染症の影響で、研究推進や成果発表に支障が出る可能性も高いので、成果が不十分な場合は4年の計画を延長して5年とすることも想定する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたが、これは年度末に予定していた成果公表のための学会発表が、コロナウィルス感染症流行で中止になったこと。保育現場での聞き取り調査を予定していたが、やはりコロナウィルス感染症流行の影響で実施出来なかったことによるものである。この金額については、次年度の研究遂行において、当初計画よりも文献等の資料がさらに必要になるため合わせて使用する予定である。
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Research Products
(3 results)