2017 Fiscal Year Research-status Report
Substantial Study on Actual Situation and Developmental Support Construction of Youth with Juvenile Delinquent Having Developmental Difficulties such as Developmental Disabilities
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17K04924
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
高橋 智 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (50183059)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 発達障害 / 発達困難 / 非行少年 / 更生保護 / 保護観察 / 保護観察所 / 保護観察官 / 保護司 |
Outline of Annual Research Achievements |
全国の保護観察所・更生保護施設・自立準備ホームの職員と保護司への調査を通して、発達障害等の発達困難を有する非行少年が社会的自立・地域移行において有する困難・ニーズの実態を検討し、支援の課題を明らかにした。調査は全43回実施され、延べ70名(内訳:保護観察官31名、保護司19名、更生保護施設職員10名、自立準備ホーム職員9名、その他1名)から回答を得た。 保護観察官および保護司からの回答では、保護観察官と保護司が連携を図りながら丁寧に少年に関わるなかで、少年との関係を築いていることが回答された。とくに保護司との関わりにおいては、地域で共に生活する「祖父母的、父母的」役割が少年にとって重要な役割を有していることが明らかとなった。本人が「困っている」タイミングで適切に介入をすることが重要であり、少年の発達困難・課題をプラスの特性へとどのように「反転」させていくかがポイントである。保護司・保護観察官のように、本人だけに「責め」を求めない「善なる大人」との出会いのなかで少年は大きく成長発達していく。 今回挙げられた事例は20歳代までの若者だけではなく、一部それ以降の成人の状況も回答されているが、いかに早期の介入・支援と二次的障害の予防が重要であるかをあらためて確認することができた。このことは法務省の矯正教育・保護観察だけの問題ではなく、学校教育(文部科学省)や福祉・就労(厚生労働省)との連携・協働が当面する課題といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究実施計画は以下の3点であるが、ほぼ遂行することができた。 ①発達障害等の発達困難を有する非行少年の発達支援・更生保護において先進的な取り組みを行っている北欧諸国の非行・犯罪に対する発達支援、地域移行支援・地域生活定着支援に関する実践についての調査を実施した。平成29年度はスウェーデン・ノルウェー・フィンランドにおいて少年院・更生保護・元犯罪者自助支援組織の調査を行った。 ②北欧調査を踏まえ、全国の少年院の調査項目を検討した。法務省矯正局少年矯正課と調査内容の協議を行い、調査協定書・調査ガイドラインを作成し、その後、訪問面接法調査を実施した。調査を通して、発達障害やそれに類似した発達困難を有する非行少年が抱える困難・ニーズやそれに対する支援の実態を明らかにするとともに少年院において求められている発達支援・地域移行支援の課題を検討した。 ③全国の少年鑑別所の調査項目を検討した。法務省矯正局少年矯正課と調査内容の協議を行い、調査協定書・調査ガイドラインを作成し、その後、訪問面接法調査を実施した。少年鑑別所の法務技官・観護教官に対する訪問面接法調査の質問項目は「発達障害等の発達困難等の特性の把握と関係機関(少年院・保護観察所)への情報伝達、少年の特性把握のための工夫や配慮・発達上の課題等、関係機関への情報伝達の際の留意点等、地域社会における犯罪・非行防止に係る援助と関係機関との連携等」について検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は次の課題について着手していく。 ①少年院(支援教育課程Ⅲ)に在院する発達障害等の発達困難を有する非行少年を対象に、彼らの抱える発達困難や支援ニーズについて面接法調査を実施する。法務省矯正局少年矯正課と調査内容の協議を行い、調査協定書・調査ガイドラインを作成し、その後、調査を実施する。 ②全国の保護観察所等職員(保護観察官・保護司・更生保護施設職員・自立準備ホーム職員)を対象とした調査項目を検討する。法務省保護局観察課と調査内容の協議を行い、調査協定書・調査ガイドラインを作成し、その後、訪問面接法調査を実施する。 ③全国の保護観察所等職員(保護観察官・保護司・更生保護施設職員・自立準備ホーム職員)を対象とした訪問面接法調査を実施し、発達障害等の発達困難を有する非行少年の困難・ニーズとそれに対する各施設での対応や自立に向けた支援の現状を明らかにする。調査項目は「少年鑑別所および少年院を出た後の発達に困難を抱える少年の困難とニーズ、更生保護施設入所中における困難と支援の現状、発達障害等の発達困難を有する少年の社会的自立等に向けた支援に関する今後の課題」を予定している。なお、各調査結果については調査結果メモからコード化を行い、カテゴリ化をして統計的処理をしながら検討を進める。 ④発達障害等の発達困難を有する非行少年の発達支援・更生保護において先進的な取り組みを行っている北欧諸国の非行・犯罪に対する発達支援、地域移行支援・地域生活定着支援に関する実践についての調査を実施する。平成30年度は29年度に引き続き、スウェーデン・デンマーク・フィンランドにおいて少年院・少年刑務所・更生保護の調査を行う予定である。
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Research Products
(20 results)