2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of barrier-free teaching materials for (learning-through-nature-experience type) environmental education which is useful in elementary-school homemaking course and nurture activities
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17K04964
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Research Institution | Okayama College |
Principal Investigator |
山口 雪子 岡山短期大学, その他部局等, 准教授 (90331818)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | バリアフリー教材 / 自然体験型環境教育 / 自然・野生動物 / インクルーシブ教育 / 視覚障害 / 小学校生活科 / 環境(領域・保育内容) / 幼児教育・保育 |
Outline of Annual Research Achievements |
インクルーシブな保育・教育環境の構築を目指し、保育・幼児教育および小学校生活科で用いる自然体験型環境教育教材を開発している。研究開始にあたり、主に視覚情報を得にくい子どもを対象に、幼児期から豊かな自然体験が障害の有無に関わらず保障されるよう、全ての幼児・児童に活用しやすい、身近な自然を用いた教材の作成を試みている。 研究2年目にあたる平成30年度は、これまでの研究成果を整理し、最終年度に向けての課題やその解決策を検討することも行っていった。平成29年度までに得られた成果のまとめとして、論文を投稿し、「環境情報科学学術研究論文集32」に掲載された。 昨年度より進めてきた身近な野鳥を題材とした教材として、鳥の卵レプリカと絵カード、デジタルデータとの連動を図った。見えないコード(スクリーンコード)を利用し、音声ペンでタッチすると、鳥の名前やカード記載の情報を読み上げるようになっている。また卵を保管している箱をタブレットのカメラでかざすと、タブレットに保存されている鳴き声や生態などの情報が画面に表れる。画面の文字情報はスクリーンリーダーにより、読み上げられるため、視覚や識字障害のある子どもでも容易に使えるようになっている。これら鳥をテーマにした立体・デジタル教材についての成果は、8月および2月の学会・研究集会にて口頭発表している。 さらに教材開発の意義・必要性を確認する目的で、視覚障害者を対象とした無記名アンケートを実施した。アンケート調査の結果は、現在、まとめている途中であるが、子どもの頃の環境が成人後の野生動物に対する印象に影響を与えていることが伺え、障害の有無に関わらず、豊かな自然体験を保障するための工夫の1つとして進めている本研究の意義は大きいと推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでも研究成果については毎年、学会や研究集会の場で発表をしており、社会への研究成果公開はある程度できていたと考えるが、昨年度はさらに、試作した教材とその評価について、平成29年度までに得られた成果を論文にまとめ、学術誌に投稿した。論文は採択され、掲載されたため、研究成果を社会により一層広く公表することができたと評価している。 昨年度に引き続き行っている身近な鳥を題材とした教材試作については、立体・絵カード・タブレット端末それぞれを連動させるシステムモデルがほぼ確立できた。見えなコード(スクリーンコード)を介在させることにより、鳥の卵レプリカと絵カードが音声ペンにより識別できる。また、鳥の卵レプリカとタブレット端末は、端末のカメラ機能を用いることで、容易に情報が認識できるようになっている。絵カードの文字情報も音声ペンで読み上げることができ、絵カードとタブレット端末との連動もスクリーンコードにより可能となるため、それぞれ独立した教材をつなぎ、興味・感心にあわせて自らが学びを深めていけるようになっている。これら教材は全て、視覚・識字障害の子どもでも音声によって活用できるため、バリアフリー教材として期待できる。また卵レプリカ以外の触れる教材として、鳥の実物大や飛び方を体感する紙教材を検討している。さらに実物の鳥の羽を加えていく予定になっており、鳥を題材とした教材は充実しつつある。 しかしながら、上述のように教材開発は進んではいるものの、当初の計画では2年目には鳥以外の野生動物を題材とした教材を試作していく予定であったこと、絵カードの文字情報は音声読み上げで認識できるようになったものの、イラスト部分についての取り組みがまだできていないことから、判断としては「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
自然体験型バリアフリー教材として、視覚障害児が実際に野外で存在を確認できる鳴き声を持つ鳥を題材とした教材試作を進めている。見えないコード(スクリーンコード)を介在させることにより、鳥の卵レプリカや絵カードを音声で認識可能にした。さらにスクリーンコードの利用はタブレット端末との連動にも有効で、タブレットのカメラ機能を用いて、鳴き声や生態などの情報が容易に確認できるようになった。立体や半立体等それぞれの教材を関連付けできるシステムがほぼ確立したことを受け、視覚障害児が晴眼児とともに活用できる教材の種類を充実させていく。具体的には、身近な野鳥に題材を絞り、触れる教材として実物の羽を集める、平均的な大きさを示したり飛び方を体感したりする紙製の教材を作る、クチバシや足などのレプリカ作成を試みる等予定している。 スクリーンコードにより、絵カードに記されている文字情報を音声ペンで聞けるようになり、視覚障害児にも利用できるカードにはなったものの、描かれているイラストがどのようなものかは認識できないという課題が残っている。この課題を克服するために、触図や発泡インクによる印刷などを今後試していく予定である。 当初の計画では、最終年度には様々な野生動物の教材を整え、試作教材の利用した機会を設け、評価することになっている。しかしながら、鳥以外の野生動物については未だ教材が試作できていない状況にある。今後の進展を考慮し、教材試作を鳥以外に広げるのではなく、鳥にターゲットを絞った一連の教材を充実させ、試作教材の評価を行う予定である。視覚障害児や幼児による評価が行えるかどうかは未定であるが、少なくとも秋には環境教育関係者に試作教材を紹介し評価してもらうよう準備している。この評価を受けて、教材の改善を図り、自然体験型バリアフリー教材の開発という研究課題の成果をまとめ、社会に発信していく予定である。
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Causes of Carryover |
課題研究初年度(平成29年度)の繰越額と平成30年度直接経費支給額から、平成29年度末に必要機材としてレーザープリンタ、ラミネーターを購入した(支払いは平成30年度の扱いとなった)。またこれまでの研究成果をまとめ、論文として投稿し、『環境情報科学 学術研究論文集32』に掲載された。この論文投稿・掲載にかかる費用も直接経費から賄った。さらに研究初年度の計画に照らして遅れていると判断した教材開発を進めていくため、当初の予定時間より長く補佐員に視覚支援を受け、研究補助してもらった。これら必要な機材の補充、論文投稿、補佐員への業務委託料支払いには、前年度の繰越額の利用が不可欠であった。 課題研究最終年度となる平成31年(令和元年)度は昨年度と引き続き、成果発表としての論文投稿を予定している。そのための視覚支援として補佐員に対する業務委託料支払いや論文投稿などの費用に前年度繰越額と今年度支給額を合わせた直接経費を使用する。さらにバリアフリー教材の試作に必要な物品購入を検討している。具体的には、現在、鳥の卵レプリカなどの立体教材、見えないコード(スクリーンコード)を介在させたデジタル教材の充実は図れているものの、生きものカードに描かれたイラスト部分への対応が不十分なため、対策として発泡インクなどの試用を計画しており、そのための費用として使用予定である。
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