2017 Fiscal Year Research-status Report
バイオミメティクス・ナノ構造制御された自己修復滑液膜表面による熱伝達効率上昇
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17K04992
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
白鳥 世明 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (00222042)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 撥水 / 防汚 / コーティング / 自己修復 / バイオミメティクス / エネルギー / SLIPS / 表面 |
Outline of Annual Research Achievements |
米国のハーバード大学およびMITのグループにより液体を滑らせる撥水・撥油現象として2011年にSLIPSが報告された。続けて申請者らは2013年に透明性と自立性、撥水性、撥油性を兼ね備えたGel-SLIPSという滑液膜を考案した。 ②しかし、いずれの膜も室外環境における風雨に耐えうる機能に乏しいため、本研究では、生物の表皮の代謝のメカニズムを模した生体模倣により自己修復機能を付与することを検討する。 初年度は生体における擦り傷の治癒および外表皮の代謝のメカニズムを人工系に取り入れ、申請者らが見出した滑液膜表面(Gel-SLIPS)に 自己修復機能の発現を試みた。樹木の表皮や植物の葉の表面には無数の配管(道管、師管、葉脈)によるネットワーク構造が巡らされ、樹皮の部分的な破損、水分の欠如に対応して徐々に再生していく。本研究ではこうした植物の再生機構のバイオミメティクスを推進している。具体的には葉脈のナノ構造をナノファイバーで作製し、それを薄膜に埋め込んだNano Composite構造を作製た。(1)温度による相転移を活用した固体→液体変化 を活用し、また、(2)表面の液膜、もしくは固体膜の欠損による「液体/固体界面」での拡張係数の変化を活用することで、部分的に物質が欠損した表面への物質移動を促進させる。 葉脈類似の構造に関しては、申請者らが確立してきたポリマーのナノファイバー構造を用いて推進している。申請者らは上記の概念をそれぞれ2016年に学術雑誌ACSNano等に発表した。本研究ではこの概念を 滑液膜表面に適応した。その結果、より自己修復性に優れた薄膜を得ることができようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ研究計画どおりに進行し、論文発表(学術誌掲載4報)、国内学会、国際学会でそれぞれ成果発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者らは金属配管や平板上に固体滑液膜を形成することで、水蒸気から水滴への液滴凝縮を計測することで、熱伝達係数が上昇を計測する。本研究では、これを発電所や冷暖房、冷蔵庫等の熱交換機への適用をめざした、熱伝達効率の最適化に関する基礎研究を推進する。具体的には、昨年度確立した自己修復機能を有する滑液膜(Gel-SLIPS)および水滴の転落性を上昇させた滑落膜を金属基材表面にコーティングし、水蒸気から凝縮して形成された水滴の表面接触角と転落角、転落速度、液滴の落下速度を計測する。そして、前年度構築した滑液膜の膜厚および形状・組成と熱伝達効率との相関を見出す。本研究で推進する液膜コーティングを用いることで、複雑な配管の方が均一塗布における優位性が発現すると予想する。また、バイオミメティクスのアプローチを用いて、コーティングパターンやコーティング成分に関する最適化を行う。
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Research Products
(11 results)