2018 Fiscal Year Research-status Report
テンプレーティングCVD法によるグラフェンナノコンフォメーションの制御と評価
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17K05011
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
田中 秀吉 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所企画室, 室長 (40284608)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 仁 広島大学, 先端物質科学研究科, 准教授 (60359099)
富成 征弘 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室, 研究員 (90560003)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ナノカーボン / CVD / ファインプロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに開発したCVDセル形成技術を足がかりとして、プロセス条件の最適化や高度化に注力した。実施にあたっては、すでに我々の研究グループではCu(111)単結晶面上におけるグラフェンシート作成プロセスについて十分な実績があること、サファイア基板上にて作成したCuスパッタ膜は(111)配向しやすいとの先行研究事例があること等を踏まえ、前年度に石英基板上で実施したCVDテンプレート基板の作成実績をもとに、同様の構造をサファイア基板上に作成するための基礎的な試みを行った。その結果、事前に平坦化処理したサファイア基板を用いて、これまでに石英基板上に形成したものとほぼ同様のCVDパターンの基本構造を作成する目途が立った。目下、この構造の局所コンフォメーションをポストアニール等によって調整しながら、形成されるグラフェン構造にどのような影響が出るか評価を進めているところである。また、CVDによる成膜と合わせて、基板上に形成された有機分子体の自己組織化構造の基板上結合反応によってグラフェン構造を形成させる試みも行った。この手法の強みは、原料となる有機分子の内部構造を予め調整しておくことで、基板上重合反応に先立って形成される自己組織化構造により最終的に形成されるグラフェンシートと下地テンプレートの整合性やグラフェンシートの基本物性を制御できる点にある。本年はまず炭素数30からなる直鎖状炭化水素分子(トリアコンタン)の自己組織化構造を超高真空下にてCu(111)単結晶基板上に形成させ、そのまま基板上加熱した際に進行する形態変化についてSPMやXPSにて詳細に調べた。その結果、加熱に伴い、グラフェンシートの成長核と考えられるヘキサゴナルドメインが形成される様子が走査型プローブ顕微鏡によって確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
グラフェンシート形成に関わる触媒機能を有する金属薄膜セルの位置や形状を一連のファインプロセスに基づいて精密に制御したうえでCVDプロセスのテンプレートとして活用することで、高精度にてコンフォメーション制御された高品質なグラフェンシートを基板上に形成させるための基盤技術を開拓することが本研究の最終的な達成目標である。今年度は、テンプレートの下地部材となる酸化物基板をこれまでの石英基板からサファイア基板に変更したことで種々の成膜および加工条件に全面的な洗い直しが必要となった。これにより、CVDパターンの形成及び、それらを利用した成膜プロセス条件の最適化に予想以上の時間を要したため、CVDテンプレート作成技術の高度化やテンプレート上でのCVDプロセスの最適化、形成されるグラフェンシートの物性評価など、計画に比して若干の遅れがある。然しながら、サファイア基板上のテンプレート形成に関わる一連の作業はこれまでに進めてきたCu(111)単結晶表面上におけるグラフェンシート形成技術の蓄積を活かすためのものであり、既にCVDテンプレート作成に必要となる各種条件の再構築がほぼ完了していることから、研究の遅れについては次年度の早い段階において十分に取り戻せるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実績を足がかりとし、次年度前半はコールドウォール型CVDプロセス炉によるサファイア上テンプレートを用いたグラフェン形成プロセス条件の最適化に再優先事項として取り組む。特に、形成されるグラフェンシートの局所コンフォメーションとサファイア上に形成したCu(111)薄膜の配向状況やセル形状との相関、Cu膜圧依存性等をSPMやラマン分光装置等によって精密に評価する。これまでの実験結果により、CVDプロセスによって作成されるグラフェンシートの出来はプロセスに使用する触媒金属表面の原子配列状況に大きく影響されることが強く示唆されていることから、次年度後半はテンプレートとなる触媒金属セルの微細構造をより精密に作り込むことによって、グラフェンシートの諸物性がどこまで制御可能であるかを明らかにする。これらの成果を年度内に取りまとめ、基板上にグラフェン構造を制御性よく作り込むための技術としての「テンプレーティングCVD法」の有用性を示す。
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Causes of Carryover |
1インチ対応のCVD反応炉の立ち上げ作業に際してプロセスの副産物として排出される水素ガスの処理が問題となり、その対策設備の設置に時間を要したことからCVDプロセスに使用する予定の各種消耗品の購入に関わる予算執行が一部先送りとなった。一方、研究を分担する広島大学にて有機分子自己組織化構造の基板上重合反応によるグラフェンナノ構造の作成実験において有望な結果が出ており、次年度において大きな進展が期待されることから、次年度使用額の一部を分担者に割当てることで研究活動の加速を図ることとする。
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