2017 Fiscal Year Research-status Report
Spatio-temporal control of ultrashort optical pulses based on hyper-spectral control of light waves
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17K05069
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山根 啓作 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (50447075)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 超高速時空間制御 / チャープ / 超短光パルス / 空間光変調器 / 超高速変調制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
時空間制御光波を発生するにあたり、今回原理実証として光周波数コムを使用しない単純な系を用いて実験を行った。本研究では最終的に1μm以上の長波長帯の光源を用いるが、ここでは既存の中心波長800nmのチタンサファイアレーザー発振器を用いた(スペクトル半値幅:80 nm)。まず入射光波をビームディスプレイサによって平行な2光束に分割し、空間分割波長板を用いて偏光状態を制御した後に空間光変調器(SLM)に入射させる。次いでこれらの光波に対してSLMによって独立に空間変調を行った後に、対称な系を用いて合波させることで空間多重された光波を発生させた。本光学系は本研究において開発を行う時空間制御光学系の簡易版と捉えることができ、本質的に共通光路の干渉計となっていることから機械的な安定性に優れるという利点も有する。時間軸における制御については既に実証済みのリング状光格子の超高速回転同様、チャープパルス対を利用する手法を用いることによって実現した。その結果、方位角方向のビーム強度制御のみならず、動径方向に対してもsub-THz域の超高速強度分布制御を実証することができた(国際会議投稿済)。これはビーム断面内における2自由度(方位角方向及び動径方向)を利用した柔軟な時空間制御に成功したことを意味している。現時点で、光波の強度分布の制御速度としてsub-THz域を達成している研究機関は他に存在しない。また、ここで得られた成果はコム状スペクトルのそれぞれの成分ごとに空間制御を行う際に重要な知見を与える。 昨年度は、前述のチャープパルス対を用いた技術を利用することで、直線偏光のsub-THz域での偏光軸回転をも実証し(偏光回折格子を利用)、さらに4-f 光学系を用いた任意の偏光渦発生にも成功した。これらの成果は強度分布のみならず偏光状態をも含めた多彩な超高速時空間制御光波の発生につながると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
項目[研究実績の概要]での実行結果に加え、高繰り返しファイバーレーザーの構築及び時空間制御光学系の検討を行った。ファイバーレーザーに関しては、高繰り返し化の報告例が多い1.55μm帯のレーザーを構築し、非線形偏波回転を利用したモード同期によりパルス発振を確認した(繰り返し周波数: 17MHz)。高繰り返し化(>GHz)の手法としては申請書で提案したマイケルソン干渉計又はエタロンを利用して周波数域で周期的な変調を与える方法を採用したが、高繰り返し化については現時点で達成できていない。高繰り返し化するということは1パルス当たりのエネルギーが減少することに対応し、モード同期を得るために必要な非線形性が得られていないことが原因であると考えている。現在共振器内の分散を0に近づけて時間幅の広がりを抑え、より低いパルスエネルギーで高い非線形を得ることを試みている。共振器内の各種ファイバーの長さを調節して共振器内の分散を全体として正常分散に設定した上で、共振器内に回折格子対を挿入することで分散量を調整可能にしてあり、現在最適化を進めている。 時空間制御光学系については、当初、回折格子及びVIPA(Virtually Imaged Phased Array)を併用して光周波数コムスペクトルを2次元的に空間分離することを想定して設計を進めていた。しかしながら、VIPAは周波数分解に関しては十分な分解能を有しているものの、本質的に素子内部における多重反射を伴うことに起因して入射光の空間的な性質を保持することが困難であることがわかった。そこで回折格子によって同一直線上に周波数分解された光波に対して、特殊な構造のシリンドリカルレンズを用いてビームを空間的に対称移動させ、2次元的な光周波数コムの分解を行う光学系を新たに考案した。既に特注品のシリンドリカルレンズは納品されており、現在検証を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
ファイバーレーザーの高繰り返し化について、引き続き共振器内の分散の最適化を進める。また、光源の準備に関するリスクもあることから既に他の研究機関との議論も始めており、連携も視野にいれて早急に高繰り返し化の実現を目指す。 時空間制御装置については、シリンドリカルレンズを利用した新規光学系について基礎的な検証を終えた後に、実際の設計・構築を行う。今年度はまず最も単純な光学配置として、フーリエ面上で各光周波数コム成分を空間的に2列に分割して配置する光学系を実現する。光周波数コム成分毎にある程度の精度で独立に空間変調を行うためには1コム成分あたり100 x 100 程度のピクセル数を割り当てることが必要と考えている。今年度まず検証を進める2列のコム成分配置でも単純には数十本程度のコム成分を独立に空間制御可能であり、光周波数コムベースの時空間制御の原理実証を行うことは十分可能である。 今年度、時空間制御のために液晶空間光変調器を購入する予定であるが、計画時に想定していた1440x1024よりもピクセル数の多い製品(1920x1200など)が現在入手可能となりつつあり、より多数の光周波数コム成分の制御につながる。光学設計及び価格帯等を検討した上でこうした製品の購入も想定する。構築した装置を用いた原理実証の内容としては、計画書に挙げた1.回折格子などを用いて予め角度分散を与えた光波の補正や2.空間強度分布の超高速制御などを想定している。我々は既に和周波発生を利用した検証法を確立していることから、2.の空間強度分布の制御をまず実行する予定である。1コム成分の空間制御に実際にはどれだけのピクセル数が必要かはこうした原理実証実験の中で検証していく。フーリエ面におけるコム成分の空間的な配置については2列に留まらないさらなる多列化も引き続き検討を進める。
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