Outline of Annual Research Achievements |
G を有限群とし e をその単位元とする。G の部分群全体 Sgp(G) を包含関係と共にポセットと見なし, また同時に付随するクイバーと見なす。 我々の先行研究では, 自然数 n と有限群 G に対して G 上の方程式 X^{n}=e の解集合 L_{n}(G) が重要な役割を果たしてきた。これを部分群レベルで解釈すると, 巡回部分群 H<G の集まりで, その位数が n を割り切るもの, となる。ここで H の位数は H の指数 exp(H)(H に含まれる要素の位数の最小公倍数)に等しい。そこで, G のベキ零部分群で, その指数が n を割り切るもの全体からなる Sgp(G) の部分ポセットを N(G,n) で表し, これを研究対象とするのである。 以下が当該年度の研究実績である。ベキ零部分群に対する N(G,n) と同様に, アーベル部分群に対する Ab(G,n), p-部分群に対する S_{p}(G,n) を定義する。このとき, 素数 p に対して, 順序複体としてのホモトピー同値性 N(G,p^{d})~S_{p}(G), Ab(G,p^{d})~S_{p}(G), Ab(G,p)~S_{p}(G,p^{d}), Ab(G,p^{d1})~S_{p}(G,p^{d2}) 等を証明した。これらの結果は, N(G,p) が Quillen 予想と密接に繋がっていることを示唆している。 一方, 定義から直ちに分かることとして, N(G,n) は N(C_{G}(x),n)(ただし x は L_{p}(G) の要素, p はπ(G)の要素を動く)のいくつかの和集合で実現される。そこで r 個の和集合で実現されるとき, それを r-cover と定める。このとき, 1-cover であるための必要十分条件は G の最大 π(n)-正規部分群が非自明であることを証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度は、新型コロナウイルス感染拡大のため、他大学や他研究機関に出張し、対面で他の研究者達と研究打合せをすることが一度も出来なかった。「研究実績の概要」で述べたように、当該年度では, N(G,n) が 1-cover であるための必要十分条件を明らかにした。しかしながら, 当初は 2-cover であるための必要十分条件の解明や, 2-cover であるような有限群 G の分類を計画していたが, そこまで到達することが出来なかった。そこで, 今回は研究機関延長の手続きを行った次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
当面の研究課題は, 昨年度実行出来なかった, N(G,n) が 2-cover であるための必要十分条件の解明や, 2-cover であるような有限群 G の分類である。具体的な有限群を観察してみると, 2-cover であるような有限群はごく一部の例外的な場合を除いて存在しないことが予想される。そこで, 有限群論特有の論法である、最小位数の反例論法を用いて, 2-cover の非存在の証明を試みる。また「一般化されたフィッティン部分群」を応用することで, 最終的に有限単純群の議論に帰着される可能性もある。その場合は単純群の分類定理を応用することにする。一方、2-cover を持つ群に関するホモロジー群の計算は, マイヤー-ビエトリス列の応用に極めて適している。そこで, 非存在の証明にホモロジー群も積極的に用いることにする。
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