2021 Fiscal Year Research-status Report
跡公式とゼータ関数を用いた素測地線とスペクトルの分布に関する研究
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17K05181
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
橋本 康史 琉球大学, 理学部, 准教授 (30452733)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | セルバーグゼータ関数 / 跡公式 / length spectrum |
Outline of Annual Research Achievements |
体積有限なリーマン面上の素な測地線の長さに関するオイラー積で定義されるセルバーグゼータ関数は、素数に関するオイラー積で定義されるリーマンゼータ関数の幾何類似と考えられていて、実際に解析接続や関数等式など類似の性質をもつことが知られている。一方で、これらのゼータ関数は有理型関数としての位数が違うため、非絶対収束域における挙動に大きな相違がある。 前年度の研究では、モジュラー群に関するセルバーグゼータ関数の非絶対収束域における値の評価を、length spectrumの数論的な表示と、指数和評価に関する van der Corput の手法や指標和に関する Weilの評価を組み合わせることで、従来の評価(Hejhal, 1970's, Iwaniec, 1980's etc.)より改良することができた(Hashimoto, 2021)。 これに対して、2021年度の研究では、セルバーグゼータ関数の対数微分の非絶対収束域における2乗積分の評価を行った。前年の研究と比較すると、それほど緻密な指数和や指標和の評価を行う必要なくなったため、モジュラー群だけでなく、合同部分群や不定値四元数環から定義される余コンパクトな群などより一般的な基本群に対して解析が可能になった。加えて、前年の評価を直接2乗積分して得られる評価を大幅に改良することができた。 本研究の成果については、すでに国内の研究集会で発表している。また、論文としてまとめ(査読のない)e-print サイトで公表し、国際学術誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初2021年度には、前年度に得られた、モジュラー群に関するセルバーグゼータ関数の非絶対収束域における評価を、より一般的な群に拡張する計画だった。これについては、セルバーグゼータ関数そのものの評価の拡張はできていないが、対数微分の二乗積分の評価を得ることができた。これは、2020年度に得られた評価を直接2乗積分したものを大幅に改良しており、さらにより一般的な群に対しても評価を拡張することができている。 以上、当初予定していた研究目的そのものを達成できたわけではないが、「2乗積分」で考えることで想定を超える成果が得られた点を考慮し、「当初の計画以上に進展している」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の研究では、モジュラー群の部分群と余コンパクトな四元数群に対して、セルバーグゼータ関数の対数微分の非絶対収束域における二乗積分の評価を得た。今後はこの評価を改良するとともに、length spectrum の重複度に関する数論的な表示を一般化することで、より一般的な数論的(arithmetic)な群に対してこれまでに得られた研究成果を拡張する。
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Causes of Carryover |
2020年度に引き続き、感染症拡大の影響で対面での開催を断念する研究集会が多かったため、予定通りの支出ができなかった。次年度には、研究に必要となる書籍・資料の購入や研究集会の参加費への支出を予定している。
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Research Products
(7 results)