2018 Fiscal Year Research-status Report
Study on random partitions and random matrices based on combinatorics and representation theory
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17K05281
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
松本 詔 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (60547553)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 対称群 / 既約指標 / 射影表現 / 組合せ論 / 表現論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、ランダム行列とランダム分割、およびそれらに関連した問題に対し、組合せ論および表現論の視点に基づいた研究を行うことを目的としている。平成29年度にKerov多項式の射影版を定式化した。これにより対称群の射影指標に対して深い考察をすることが可能になった。平成30年度は Piotr Sniady とともに共同研究を開始し、最初の結果としてStanleyの指標公式の射影版を得ることができた。 オリジナルのStanleyの指標公式は、Stanley、Feray、 Sniady らにより2005年頃から研究されている。対称群の正規化された指標を、ヤング図形の長方形座標で表示する組合せ的公式である。同値な形として、置換のサイクルの彩色関数を用いて表すこともできる。現在、ヤング対称子を用いた証明が知られている。今回の研究で射影指標も、似た形の公式を持つことが分かった。 今回の我々の証明では、まず線形指標と射影指標との間の直接的な関係式を得る。この関係式は、よく知られている「シューア関数とシューアのQ関数の間の関係式」と本質的に同値なのだが、指標間の関係式として明示化されたものは今回の論文が初めてである。この関係式と、線形指標に対するStanleyの指標公式を合わせて、我々の結果が得られた。すなわち、射影指標は、二重ヤング図形に付随したある彩色関数の有限和で表すことができる。線形指標の場合と異なり、射影指標では各項に2のべきのズレが生じた。また、同値な言い換えとして、射影指標は閉曲面の上のグラフ、すなわちマップの数え上げと関連している。また、これらの結果は、ヤング対称子の射影版が、射影指標のStanley指標公式にうまく関係していくことを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Piotr Sniadyとの共同研究により、本研究課題は大幅に進展した。「平成30年度の研究実施計画」において、「射影版のStanley多項式の研究をする」と記載したが、まさに望んだ通りの研究を進展させることができた。同じく研究実施計画に、「ストリクト分割に対する自然な長方形座標が知られていないので、これを探し出す必要がある」という旨を記載した。これは、「対称化二重ヤング図形」というものを考えることで攻略できることとなった。これらの問題に取り組む際には、いくつかの困難があった。まず定理の具体的な形が予測できなった。さらに元々のStanley多項式にはヤング対称子を用いるのであるが、射影版のヤング対称子は現状では大変複雑なため、同様の手法が適用できなかった。これらの困難は、「研究実績の概要」でも述べたとおり、対称群の線形指標と射影指標の具体的な関係式を発見することにより、乗り越えることができた。 このように、方針は当初の計画通りだが、進展は計画以上にであった。
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Strategy for Future Research Activity |
Piotr Sniady との共同研究をしばらく続けていく。射影指標の漸近挙動やランダム・シフトヤング盤の研究を続ける。線形指標の漸近挙動やランダム・ヤング盤はこれまで深く研究されている。また、これまでの我々の研究で、線形指標と射影指標の関係性が徐々に見えてきた。これらを組み合わせることで、射影指標の漸近挙動やランダム・シフトヤング盤の研究が進展することが期待できる。より具体的に、ランダム・シフトヤング盤のサイズが大きくなるとき、適当なスケーリングで見えてくる極限形状を見つけたい。 また、これまでの研究で得られた結果、すなわちKerov多項式の射影版、およびStanleyの指標公式の射影版について、研究集会等で報告し、専門家に周知させたい。 なお、以前「平成31年度の研究実施計画」には、Jack測度とガウス型β集団との関係を明らかにすること、より正確に、Jack測度に従うランダム・ヤング図形の行の長さは、揺らぎがβ-Tracy-Widom分布で記述されることを期待し、目標としていた。ところがごく最近、この問題は Guionnet, Huang によって解決された。別証明を模索することにも興味はあるが、現状はひとまず上記の問題を継続していく方針である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は2017年度の分からの負債である。大学内の業務により、いくつかの研究集会への参加を諦めざるを得なくなった。一方、2018年度は当初の予定通り執行できた。2019年度も例年と同様の出張をこなし、これまでの研究成果の発表、および今後の研究のための情報収集を行う予定である。2019年度は、確率論関係の国内出張を4件、日本数学会への参加が2回、さらに組合せ論・表現論関係の国内出張を3件、その他研究打ち合わせを数件予定している。
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