2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K05308
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Research Institution | Nagano National College of Technology |
Principal Investigator |
林本 厚志 長野工業高等専門学校, 一般科, 教授 (90342493)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 固有正則写像 / 古典型領域 / Cartan-Hartogs領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
次元の異なるCartan-Hartogs領域の間に固有正則写像があったとする。この写像が境界を越えて正則的に定義域を拡張できると仮定する。この条件の下で、このような固有正則写像が、各領域の自己同型写像の差を省いてどのように分類できるかを調べた。Cartan-Hartogs領域とは、古典型有界対称領域の各点上に複素擬楕円体が乗っている領域である。古典型領域の型に応じてI型Cartan-Hartogs領域からIV型Cartan-Hartogs領域まである。この研究では、I型とIV型のCartan-Hartogs領域を扱った。I型の場合を調べればII型とIII型の場合もほぼ同様にできること、I~III型とIV型は本質的に構造が異なること、この2つの理由によりI型とIV型のみを扱った。得られた結果は次のとおりである。I型Cartan-Hartogs領域の場合、自己同型写像の差を省いて考えている固有正則写像は、恒等写像と対角写像と呼ばれる写像を合わせたものに限ることが分かった。対角写像とは正則写像を成分に持ち、行列に値を持つ写像で、その対角成分にしか写像が出てこないものである。IV型の場合、考えている写像は、自己同型写像の差を省いて恒等写像に限ることが分かった。その後、仮定である「境界を越えて正則的に定義域を拡張できる」を省くことを考えた。領域として球の場合の拡張性を研究している文献を調べると、多くの反例があることが分かった。それらについて、拡張できない理由を調べた。固有正則写像に対して「等長性」「埋め込み」「完備性」などを仮定しても、ある滑らかさを保って拡張できないことが知られていることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ある程度満足のいく結果が得られた。膨大な計算と細かなべき級数に関する議論が必要であったが、期待した結果が得られた。しかし「写像が正則的に定義域を拡張できる」という仮定を省きたかったのであるが、今のところそれはできていない.そもそも一番簡単な球の場合でさえ、拡張問題は分かっていないため、それを最初に考えるべきと思い、それを現在研究中である。つまり「2次元球と3次元球の間に固有正則写像があったとする。どのような条件の下で、その写像は境界を越えて正則的に定義域を拡張できるか」という問題である。
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Strategy for Future Research Activity |
1,今後の課題は、定理の仮定である「写像が境界を越えて正則的に拡張できる」を省くことである。次元が同じ領域に対してはBell-Catlin, Diederich-Fornaessの定理「実解析的境界を持つ擬凸領域の間の固有正則写像は、境界を越えて正則的に定義域を拡張できる」を適用することにより、正則的に拡張できることが分かっているが、次元の異なる場合にはそのような結果は得られていない。多変数関数論では、球を調べることがまず最初に行うことである。それは球が実解析的境界を持つ強擬凸領域であり、対称性があり、自己同型群が分かっている、など、多くの良い性質を持つからである。しかし「N次元球とN+1次元球の間の固有正則写像で、境界まで連続的に拡張されるが2階連続微分可能には拡張できない例」があるなど、いくつかの思いもよらない反例がある。これらの例により、次元が異なる領域の間の固有正則写像の拡張問題は、簡単な状況でさえ何も分かっていないことが分かる。先ずは「2次元球と3次元球の間に固有正則写像があったとする。どのような条件の下で、その写像は境界を越えて正則的に定義域を拡張できるか」という、もっとも簡単な状況を詳しく調べなければいけない。固有正則写像に対して「等長性」を仮定したり「埋め込み」であることを仮定したりして、「なぜ拡張できないか」を調べることを行う予定である。
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Causes of Carryover |
隔年ごとにイタリアでCR幾何学と偏微分方程式に関する研究集会が開かれ、そこに参加予定であった。また、毎年開かれる多変数関数論に関する葉山での研究集会や冬の多変数関数論研究集会、年2回開かれる日本数学会に参加する予定であった。しかしコロナウイルス蔓延のためそれらがすべてオンラインでの開催または中止となってしまい、旅費として確保していた予算を使うことができなかった。そのため、多くの予算が残ってしまった。翌年度に繰り越しして使用する予定である。令和4年度は葉山での多変数関数論に関する研究集会が対面で行われる予定であり、その他の多変数関数論に関する研究集会も対面で行われるかもしれなく、そのために予算を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)