2019 Fiscal Year Research-status Report
総体積保存則に拘束される偏微分方程式と発展方程式による抽象論的接近
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17K05321
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
深尾 武史 京都教育大学, 教育学部, 教授 (00390469)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
愛木 豊彦 日本女子大学, 理学部, 教授 (90231745)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 動的境界条件 / Cahn-Hilliard方程式 / Allen-Cahn方程式 / 接合問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
動的境界条件下での偏微分方程式は主たる領域内での主たる方程式とは別に、補助条件として境界上での別の時間発展系を考察することになる。 当該年度には相分離・相転移現象を記述する方程式としてAllen-Cahn方程式を領域内部と境界上で考察する既存のモデルについて再考した。これまでは接合条件として内部と境界上の未知関数がトレースとして一致するいわゆるDirichlet型の接合条件が取り扱いやすさも含めて自然な条件として設定されてきた。一方、この接合条件を一般化することで、内部と境界上の未知関数が連続的につながっていない場合、例えば互いの逆符号のような設定も考えられる。実際、その場合には内部と境界で相が完全に分かれる状態を簡単に記述することも可能である。そこで、まずは一次関数で関係づけられる場合に対して、Robin型の接合条件によって近似し、極限操作によって対象のモデルの可解性を論じた。 これまでの動的境界条件下での問題は基本的に領域内部を主たる領域と捉えてきた。一方で、動的境界条件が境界上の別の時間発展系を記述するとなれば、もはや内部と境界を主従の関係で解釈する必要はなく、全く逆の発想から境界上で主たる方程式を考察しその境界上の方程式を解くための補助条件として内部の方程式を付加すると考えることが可能となった。一般に境界を持つ領域内で偏微分方程式を考察する際に、境界の方程式を「境界条件」と呼んできたことからもあくまで境界上の方程式は補助条件であった。この立場に立てばもはや「境界条件」ではなく「境界方程式」と呼ぶことがふさわしい。主たる境界上ではCahn-Hilliard方程式を、内部ではPoisson方程式とAllen-Cahn方程式を並行して考察するモデルに対して、粘性消滅法を応用し既存の結果から近似問題の可解性を論じ、極限操作によって、この新たなモデルの可解性を論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクトで得られてきた先行研究を基軸として、関連する新しいモデルの導出とその可解性を論じられる段階に入ってきた。総質量保存則を持つ偏微分方程式系が、様々な状況を記述するモデルとして幅広い応用が可能であることが明らかになりつつあり、当初の予定通り、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
計画当初予定していた研究対象であるGMSモデルに関連し、近年新たにLWモデルが導出され、研究対象はより広がりを見せつつある。また、その2つのモデルの関連性についても研究が盛んに行われ始めた。この新しい、LWモデルも研究対象に入れつつ、本プロジェクトで得られた結果がどこまで応用可能であるかについても研究を行っていく。
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Causes of Carryover |
図書購入費や雑費の残額として1,205円を翌年度に繰り越す。
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