2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K05374
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
武村 一雄 日本大学, 理工学部, 准教授 (60367216)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
亀高 惟倫 大阪大学, その他部局等, 名誉教授 (00047218)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ソボレフ不等式 / 最良定数 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画2年目にあたる平成30年度は,常(偏)微分方程式のグリーン関数を利用した連続版ソボレフ不等式の最良評価(最良定数,最良関数計算)と並行して進めている離散版ソボレフ不等式に登場するグリーン行列のデータを再生核理論の立場から整理し直した。また,本年度は正多面体グラフ,切頂正多面体,C60フラーレンとメビウスの梯子など,これまでに得られた様々な有限グラフ上の離散ソボレフ不等式に対する最良評価を拡張することができた。本研究成果は2つの意味で従来の研究成果の拡張になっている。1つ目は,離散ラプラシアンが定義されているグラフに対する次元の拡張である。特に,M×N頂点をもつ周期的な長方形は,メビウスの梯子の拡張版にあたる。2つ目は,これまでの離散ラプラシアンを自然数べきをもつ新たな離散ラプラシアンに定義し直したことである。すなわち,周期的な長方形上に多重離散ラプラシアンを導入したことが2つ目の拡張点として挙げられる。多重離散ラプラシアンの固有値,多重離散ラプラシアンに対するグリーン行列・擬グリーン行列を詳細に調べることにより,2種類の離散版ソボレフ不等式を導出することができた。また,2種類の離散版ソボレフ不等式に対して,再生核(グリーン行列,擬グリーン行列)の性質を使い,それぞれのソボレフ不等式における最良定数及び最良関数を得ることができた。特に,最良定数C0(M,N,n;a)において,MとNを無限大に近づけた際の上限と下限を求め,これらの極限値がガウスの超幾何関数の特殊値として表現される事実を発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究計画2年目にあたるが,大学内の委員会業務により大幅に時間を取られたため,研究発表に支障が生じた。これにより,研究計画,特に研究発表についての進捗に若干の遅れが見られるものの,研究成果としての論文出版は当初の研究計画通りに進められているため,全体としてはおおむね当初の予定どおり進んでいると判断される。次年度は,研究成果発表に関して遅れを取り戻すべく関連の深い研究会,学会または国際会議にて積極的な発表を行ってゆきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画初年度から引き続き研究成果,特にグリーン行列を再生核理論の立場から整理し直したことにより,離散ソボレフ不等式の最良定数は有限グラフの硬さを表していることが分かってきた。現在,頂点数60個のC60フラーレンとその仲間たちについてソボレフ不等式の最良定数を計算,それらの相互比較を行っている。現段階では,求めた最良定数の中でC60サッカーボールフラーレンが一番小さいことが分かっている。最良定数が最も小さいということの物理的な意味は,対象としているC60フラーレンとその仲間たちの内で,C60サッカーボールフラーレンが最も「たわみにくい」という事実を表している。この事実は他の有限グラフにも同様に当てはめられる。したがって,最良定数は対象としている有限グラフの強度を表す一つの指標となることを,これらの事実は示唆していることが分かってきた。今後は,様々な有限グラフや更には連続版においても同様の意味付けを行うことができるかを究明してゆきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた大きな理由は,大学の委員会業務に時間が取られ,執筆していた論文の投稿が当初予定していた時期より大幅に遅れたためである。この遅れにともない,予定していた国際会議の発表を見送ることになったため次年度使用額が生じた。しかしながら,平成31年度は委員会業務を外れるため,昨年度に比べ時間的余裕が生まれることかが予想される。このため,当初の研究計画通りに関連の深い研究会あるいは国際会議にて研究成果の発表を行う予定である。
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Research Products
(1 results)