2019 Fiscal Year Research-status Report
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17K05376
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
鈴木 幸人 早稲田大学, 重点領域研究機構, 主任研究員 (90596975)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大縄 将史 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (10443243)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 構造保存型数値解法 / 非平衡熱力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子ポリマーなどの粘弾性流体に代表される複雑流体の非平衡熱力学的モデリングを行った。具体的には、可逆過程をHamilton系として、また非可逆過程を二次の散逸ポテンシャルをもつ散逸系として記述し、それらを適当な退化条件を満たすように結合するGENERICと呼ばれる非平衡熱力学の枠組みに基づいて、質量保存則、運動量保存則、エネルギー保存則およびconformationテンソルの輸送方程式を導出した。さらに、熱流束に対してCattaneo則を適用した場合についても同様のモデリングを行った。これらの定式化は、いずれも歪対称のPoisson括弧と対称正定値の散逸括弧およびそれらに対する退化条件によって記述されるものであり、(昨年度までに開発してきた離散化手法を拡張して)それらの構造を保存する離散化を行うことによって、熱力学に完全に適合した(すなわちエネルギー保存則とエントロピー増大則を同時に満たす)数値計算手法を開発することが可能となるものである。なお、この定式化においてはconformationテンソルの移流は速度ベクトル場に対するLie微分によって自然に記述されることが分かる。一方、Cattaneo則における熱流束の移流に対してLie微分を適用すると、(GENERICの構造には矛盾しないが)conformationテンソルに由来する応力が熱流束に依存するようになる。この依存性を排除するには、熱流束の移流に対して物質微分(Lagrange微分)を使用すれば良いことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度から引き続き相変化と表面張力を伴う二相流れの構造保存型数値解法の検討を行ってきたが、物理的にな意味付けができていない付加項が現れるという難点は残されたままである。一方、当初は予定していなかった複雑流体に対する非平衡熱力学的構造を整理することができ、それに対して構造保存型数値解法を開発する道を開くことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は現在抱えている問題点を解決することを目指し、抜本的な定式化の再検討を行うことを計画している。具体的には、微分形式、Lie微分等の微分幾何学的概念を用いて流体力学の基礎方程式を定式化し、その構造を保存するような数値計算手法を鎖複体、余鎖複体等の位相幾何学的概念に基づいて開発することを基本方針とする予定である。
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Causes of Carryover |
本研究の成果を報告する論文を査読付き雑誌に投稿中であるが、通常は査読結果に基づいて論文の修正を行う必要が生じる。その修正に付随して追加の研究および作業を行う必要があるため。次年度使用の予算は、これらの追加の研究および作業において用いる計画である。
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Research Products
(4 results)