2020 Fiscal Year Research-status Report
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17K05380
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梅田 秀之 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (60447357)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 初代星 / 超大質量星 / 超巨大ブラックホール / ニュートリノ背景放射 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度に発表した査読論文の中で、本研究課題と最も関係の深いものは以下の3編である。 まずNagele他の論文では5万太陽質量程度の巨大初代星の進化について再考した。2014年のChen他の論文以前は300太陽質量を超える非回転の初代星は爆発せずにブラックホールとなると考えられていた。しかしChen他の論文で5万5千太陽質量の星は、一般相対論的効果のためにHe燃焼の段階で爆発することが示唆された。我々はこの問題を再考し、この爆発の機構の解明を行うとともに実際に爆発の起こる質量範囲は極めて狭いことを示した。しかし爆発の有無は、わずかな外層の構造に依存するため、例えば、わずかな回転の効果などに影響されることを示した。 谷川他の論文では、重力波源となる初代ブラックホール連星の質量分布や頻度を計算する種族合成法の基礎データの一つとするために初代星の進化計算を行い、その結果をフィットする式を作成した。この結果は今後の種族合成法を用いたブラックホール連星形成の計算に大いに有益となることが期待される。 梅田他の論文では近年重力波観測によって観測されている数十から百太陽質量程度のブラックホールの起源と関連する、太陽質量の80~150倍程度の初代星の進化計算を行った。これらの星は進化末期のケイ素燃焼時に振動を起こし多くの外層を失う。これまでの計算ではこの質量放出によって最後に残されるブラックホールは50太陽質量程度になると考えられていたが、これより重い150~300太陽質量程度の星はペア不安定型超新星になると考えられており、50~100太陽質量程度のブラックホールは形成されない(ブラックホールの質量ギャップと呼ばれる)のではないかと考える研究者が多かった。この研究では、振動で失う質量の量は妥当な仮定の範囲内で大きく変わり、質量ギャップは小さくなる可能性があることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は概ね順調に進展し、ニュートリノ輸送を考慮した、一般相対論的な超大質量星の1次元崩壊シミュレーションも概ね終了しているが、現在論文の執筆中である。 しかしCOVID19の影響により、研究発表を行う機会がなかったこともあり、研究期間の延長を申請した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はニュートリノ輸送を考慮した、一般相対論的な超大質量星の1次元崩壊シミュレーションを行い、その結果をまとめた論文を完成させ、査読雑誌へ投稿する計画である。その論文では、重力崩壊中のニュートリノ光度やスペクトルの進化計算を行い、将来観測可能となると期待されているニュートリノ背景放射への寄与を評価する計画である。
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Causes of Carryover |
COVID19の影響により、予定していた海外や国内での研究発表を中止した。また導入予定であった計算機の一部も大学への入校が困難な時期が続いたため導入を延期した。本年度には、予定されていた計算機の導入と研究成果発表のための旅費として研究費を使用する計画である。
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