2020 Fiscal Year Research-status Report
Understanding the accretion phase of star formation
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17K05387
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
町田 正博 九州大学, 理学研究院, 准教授 (10402786)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大質量星 / 星形成 / アウトフロー / 星周円盤 / ジェット / 磁気流体 |
Outline of Annual Research Achievements |
質量降着期の星形成過程を理解するために大規模シミュレーションを実行した。星は0.1太陽質量以下から100太陽質量以上までと異なった質量で誕生する。この研究では異なる質量の星の誕生過程を理解するために、星への質量降着率をパラメータとして星形成の研究を行った。高い質量降着率下では大質量星が、低い質量降着率下では低質量星が誕生する。また、初期に星形成コアが持つ磁場の強さもパラメータとした。 計算の結果、大質量星形成過程では磁場が弱い場合には、典型的な小質量星形成過程で頻繁に観測される双極アウトフローが出現しないことが分かった。解析の結果、磁気圧によってアウトフローは駆動を開始するが、中心星に向かい大量に落下してくるガスのラム圧によってアウトフローの成長が阻害されることが分かった。 観測では大質量星から大質量アウトフローが観測されている。しかし、大質量星は遠方にあるため全ての、またはほとんどの大質量星がアウトフローを出しているかどうかは分からない。この研究から大質量星からアウトフローが出現する場合には、大質量星が誕生する星形成コアが、重力エネルギーに匹敵する程の磁気エネルギーを必要とすることが分かった。そのため、今後の観測によって大質量星形成過程では必ずアウトフローが出現していることが確認できれば大質量星が強磁場環境下のみで誕生することになる。この場合磁場が大質量星形成過程に強い影響を与える。他方、アウトフローを付随せずに大質量星が誕生することが確認出来た場合、大質量アウトフローを伴う形成とは異なるモードの大質量星形成過程が存在することを意味する。そのため、この研究と大質量星形成領域の詳細な観測を比較することにより大質量星形成過程を解き明かすことが可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
質量降着率をパラメータとして小質量星から大質量星の形成過程の研究を行った。前年度から継続していた大規模シミュレーションを終了させ、その結果を解析し査読に投稿し掲載された。そのため、研究はおおむね順調に進展していると考えらえる。 今年度の研究では磁場強度と質量降着率をパラメータとして、分子雲コアから原始星誕生後1万年間の計算を30通り程度行った。その結果、星形成過程でアウトフローが駆動する条件を求めることが出来た。また、弱磁場環境でも磁場が円盤で増幅することにより分裂による多重星形成は頻繁には起こらないことが分かった。円盤分裂が起こり伴星が出来た場合でも主星の周りを軌道運動するにつれて主星に近づき最終的に多くの場合主星に落下する。また、磁気制動の効果により角運動量が効率的に円盤から星間空間に輸送されるため円盤の成長は抑制される。低質量降着率下で誕生する低質量星の場合、円盤上空のガスが薄くラム圧も低い、そのため弱磁場環境下でもアウトフローが出現しやすい。アウトフローは出現すると初期のガス雲の50%程度のガスが放出される。他方、大質量降着率下で誕生する大質量星は円盤上空のラム圧が強いためアウトフローが出現しない。そのため、質量放出率は低く星形成コアのほとんどが中心に落下して大質量星となると考えられる。この研究によって、磁場が強い場合、大質量星形成過程は小質量星形成過程のスケールアップ版と考えても良いが、磁場が弱い場合大質量星形成過程は小質量星形成過程とは大きく異なることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究では、原始星形成後の星周円盤やアウトフローの長時間推進を可能にするためにシンクセルを用いていた。シンクセルは星が出来る領域のガスを計算領域から引き抜き重力源としてのみ扱う手法である。この手法により中心星まで解像しないために空間解像度が粗くなるが時間刻み幅を長く取ることが出来る。その結果、長時間進化の計算が可能になる。しかしながら、中心星近傍1au以内を解像していないために、原始星や円盤内縁から出現する高速ジェットを解像することは出来ない。 今後の研究では原始星までを空間分解して0.01au以下の空間解像度で星形成過程の計算を行う。原始星からのアウトフローの駆動については、その駆動メカニズムにおいて2つの異なる説があり論争が続いている。一つは、円盤外縁領域から直接磁気遠心力風によって駆動する直接駆動説である。もう一つは、原始星と円盤内縁との相互作用によって駆動する高速ジェットが周囲のガスに運動量を与えて低速のフローが駆動するというエントレイメント説である。 我々の以前の研究で、大質量降着率下で比較的磁場が弱い場合にはアウトフローが出現しないことが示された。今後の中心星を解像した計算で高速ジェットが出た場合に低速のフローが駆動するかどうかを確認することによって、後者のエントレイメント説が正しいかどうかを判定することが出来る。この場合、原始星まで空間分解しているため時間の刻み幅が小さく長時間進化の計算は出来ない。しかし最新のスーパーコンピュータを用いて出来る限り長時間の進化計算を行い、アウトフローの駆動機構を特定する。また、円盤形成や原始星進化について解析を行い、大質量星形成初期段階を解明する。
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Causes of Carryover |
共同研究者との打合せで国内外に出張する予定であったがコロナ渦のため出張が出来なかった。そのため次年度に出張することとし繰り越した。
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Research Products
(4 results)