2018 Fiscal Year Research-status Report
星形成領域、晩期型星星周領域における磁場の役割の研究
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17K05388
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
新永 浩子 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (20709589)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 天文学 / 天体物理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、赤色超巨星であるおおいぬ座VY星(VY CMa)の星周領域のVERAを用いたVLBI観測の解析を継続して行った。今回のVERAでの観測は、過去によく行われてきたVLBI観測で捉えてきた輝線である振動励起状態がv=1,2の回転遷移がJ=1-0輝線に加えて、v=0, 3のJ=1-0輝線も加えて、4輝線同時観測を行った。v=3, J=1-0は、エネルギー準位にして5000Kを超える回転遷移であり、晩期型星の中でも限られた星の周りでしか検出されていないが、今回の観測では、VY CMaの星周領域でも、v=3のmaserを検出することに成功した。また、v=0のJ=1-0輝線は、本来、熱的輝線であるが、60-70パーセントの高い直線偏波率を示すため、熱的な励起成分に加えて、非熱的成分、すなわちmaser成分がのっており、これまでにVLBIでイメージング検出された例がなかったが、丁寧に解析することにより、今回、v=0, J=1-0輝線のmaser成分のVLBI観測でのイメージング検出に成功した。v=0の高い直線偏波の起源の謎に迫る重要な成果であり、速やかに成果を出版する予定である。同星の星周領域はOH分子輝線でも明るく、同分子の3輝線のイメージング観測をMERLIN望遠鏡を用いて行ったデータの解析に着手した。VY CMaの星周領域でのOHメーザークランプの数は50から80を超え、数が多いことに加えて、星の中心位置から3-4秒角に渡って広がっており、VLA望遠鏡(B配列)で検出したSiO v=0輝線の分布範囲(2秒角程度)の2倍程度の広がりを持つ。OH分子は磁場によるゼーマン分裂が比較的大きいため、より広い範囲での磁場強度の測定ができる可能性を秘めている。今年度は、これまでの成果をまとめた出版に加えて、OH分子メーザーの解析と、本研究プロジェクトの総括を行うことを中心に進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
OH分子の3輝線はMERLIN望遠鏡で既にデータが取得されており、その他、既存のALMA望遠鏡、VLA望遠鏡、VERA望遠鏡によって取得したデータと合わせることで、本研究課題の総括の主要部分の考察は担保されるため。一方で、単一鏡である野辺山45m望遠鏡を用いたサーベイデータについてのデータ解析には、分光計、およびデータ解析ソフトを開発した研究者による協力が必須である。現在、この解析ソフトの不具合が複数見つかり、処理に時間を要している。昨年度から解析は進めており、不具合の箇所も既に担当者に報告しているため、今年度のうちに、なんとか解決して、論文として成果をまとめることを目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
上記でもふれたとおり、本研究プロジェクトの総括に重点を置いた年度となる。これまでに取得したデータから総合的に考察し、星周領域における磁場の役割について、まとめた論文の出版、並びに2020年3月に予定されている国際研究集会での成果報告を予定している。現在、VLA望遠鏡を用いた新たな観測提案を提出しており、これが採択され、観測時期が年度内になる場合は、これも含めて、研究総括論文として出版する。
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Causes of Carryover |
旅費の見積もりと実際の旅費の間で差分(\4,916)が出たため、次年度の旅費として繰り越して用いる計画である。
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Remarks |
2018年日本天文学会春季年会(会場は千葉大学)に於いて、日本天文学会が特に選んだ研究成果3件のうちの1件として、千葉県庁記者クラブで記者会見を行った。
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